生徒と指導者の距離

生徒と指導者の距離は「近すぎず離れすぎず」が理想だ。近づき過ぎて友達のようになってもいけないし、突き放し過ぎてもいけない。師弟という言葉があるが、この語感には適度な緊張感がみなぎっていて良い。

現在では、子供が大人にタメ口を使ったりする場面も少なくない。家庭ならばまだしも、学校やその他の自宅外の場面でもそういうことが多いようだ。また、大人は大人で子供に気を遣い過ぎて子供にすり寄るようなこともあったりする。「これをしてあげるからさ、言うこと聞きなよ」といった具合だ。

これら全て私にとっては論外な話なのだが、適度な緊張感を生徒と私の間で維持するために日々神経をすり減らしているといっても過言ではないだろう。距離を近づけすぎたらイザという場面で指導が効かなくなるし、誉めることを一つ取ってみても、「誉めたら落ちるの法則」というものが私の中にあって、誉めて伸びればそれに越したことはないのだが、この頃の生徒を見ていると、誉めたら「これでいいのだ」と安心してしまって、成長が止まってしまう場合が99%である。

だから、ちまたの教育書に書かれているように「たくさん誉めましょう」とかそういうことは私にとってはタブーとなる。思わずびっくりしてしまうような余程のことがない限り、私は誉めないし、私が生徒を誉めた時は本当にすごいことが起きた場合のみだ。少なくとも無理して誉めることは絶対にしない。

喜怒哀楽を超えて、淡々と目の前のことに取り組む人間になってくれれば良いし、むしろそれでないと大人になってから良い仕事は出来ない。他人からの評価は大切だが、それをいちいち気に掛けないと先に進めない人間になってはならない。

子供は大人に近づき過ぎだし、大人は子供に近づき過ぎだ。これが現代に対しての私の見解の結論である。

NHKで放送されている韓国ドラマのトンイを見ていると、後の英祖王となるヨニングンが幼少時代に師から教えを受ける場面が多く出てくる。礼節をきちんと守りながらも、時には子弟で散歩に出掛けたりもする。そこの硬軟の使い分けはドラマの中とはいえ絶妙だなと思うし、このドラマに描かれている師弟関係こそが、現代の学校、塾の中での理想とすべき師弟関係の空気感だと思うのである。