金券・物品を受け取るな

これは程度の問題であるので、あくまでケースバイケースであって一概に言えることではないのだが、

指導期間中に生徒の家庭からの授業料とは異なる謝礼(金券など)は受け取るべきではない。なぜかというと、受け取ってしまったらまず生徒の家庭に対して「有難うございました」と塾が頭を下げなければならない。その結果、塾が生徒または家庭に対していざという時に強い態度を取れなくなってしまう。

渡した側としては、日頃の謝礼の気持ちを込めて、という意味だけであって深い考えはないだろうが、意識の底では「あそこまでして渡してあげたのに、何で先生はうちの子にそんな強い指導をするのか」という不満足の気持ちが発生する。また、塾としては一度頭を下げた相手に対して強い態度を取れないということはどういうことかというと、例えば生徒が酷い内容の宿題を持参した時に「帰れ」「出て行け」という最も強烈で効果的な指導をとりづらくなってしまうのである。

結果として、生徒がどんなに酷い失態を犯したとしても、塾としては穏便に「まあ、今度から気をつけようね」と大手塾のようなお客様扱いを生徒に対してせざるを得なくなってしまうのだ。これは教育の根幹をゆるがす大問題である。

生徒としては、自分の目の前で金券や物品が(生徒自身はその内容を把握していなかったとしても)先生に渡る過程で、先生が生徒や家庭に対して「どうも有り難う」という謝辞を述べる姿を目撃する。それによって生徒は自分が上位であるという勘違いを起こしかねないのだ。つまり、生徒である自分は上位で、物品を受け取った先生は頭を下げる下位であるという認識が、意識の底で育まれる。

で、あるので、結論としては指導期間中には塾側が請求する授業料以外の金券・物品を生徒および家庭から受け取らないべき、というのが本筋だということ。

これが程度問題だというのは、生徒が修学旅行に行ってきたお土産であれば受け取ればよいし、生徒としてはむしろ日頃世話になっている先生にそういったお土産を買って渡せるくらいの配慮と気遣いは必要である。また、受験後などの指導終了にあたって生徒または家庭から贈られたものであれば、それは受け取っても今後への支障は一切ないので問題ないだろう。

まあ、私が生徒または親の立場であれば、季節の節目ごとに先生への心づけをするだろう。そこが難しいところなのだが、指導者の立場として基本的に認識すべきことをまとめて書いてみた。

これは「色々な」経験を経てきた上での私自身の思うに至った事柄である。