20年後にわかること

JIA日本建築家協会が主催している「オープンデスク」という学生向けのインターンがあって、私が大学3年の夏、飯田橋の日建設計で建築模型づくりの企業実習をさせていただいた。

その時の担当社員だったSさんという方に「仕事をしながら片付けをしなさい」ということを教わった。

模型づくりなので、スチレンボードやアクリル板といったプラスチック材料が机の上に散乱しやすい。また、図面や定規、カッターナイフといった道具もたくさん使い、ちょっと作業を進めるだけですぐに机の上が混雑していく。

そこでSさんは「仕事をしながら片付けをしなさい」とアドバイスしてくださった。

当時は学生だったこともあり、何となく分かった気はしたものの、腹ではこれを理解していなかったと思う。ところが、不思議なことにある年齢を過ぎると20年前に教わったことが急激に自分の中で花開いてきた

今、当塾で複数の生徒にそれぞれのカリキュラムを実施しながら、しかもどの生徒にとって一瞬でも手持ち無沙汰にならないように段取りを構えていくのは仕事としては比較的ハードな方だと思う。

そういった仕事を更に洗練させるために、私が教材を整理して随時本棚との間を往復しているのは、まさに「仕事をしながら片付けをする」そのものである。観察力のある生徒は気付いているかもしれない。

元学校教諭だった私の師匠のT先生のように、使った教材を机の上に無造作に積むだけで、積んでいるけれども何がどこにあるかは把握している、という職人気質タイプの先生もいるが、私とは対極の立ち位置である。

私のスタンスとしては、片付けをすれば必要な時に必要なものを瞬時かつ的確に取り出すことが出来る。「えーと」と探す手間も時間も不要になり、仕事がスマートになることで仕事の処理量も増やすことが可能になる。空いた余裕で生徒対応も更に充実させられる。

私の場合は仕事を始める時点で片付けが始まっている。仕事が終わったから片付けるのではなく、仕事をすることと片付けることは同義なのだ。

「20年後にわかること」が人生に多いのだとすれば、やはり当塾もその生徒の20年後に芽吹き出す言葉を今届けなければならないと思っている。

当塾についての詳細な情報はこちらをご覧ください。