生徒を観察していると、最初はダラッとした空気を引きずって入室してきたのが、次第に塾内の適度な緊張感に飲み込まれて、取り組みの精度が高まっていくパターンがある。
近年は楽しくてフレンドリーな雰囲気をアピールする塾が多いが、それには生徒が適度な緊張感を持ち合わせていることが大前提。
適度な緊張感がないと「まあいいや」「別にいいや」と謙虚さを失い、自力が発揮できず、本来解けるはずの問題も解けなくなる。精神が眠ってしまうのだ。
生徒がカチカチに身構えてしまう硬直した空気も行き過ぎだが、適度な緊張感で生徒自身の力を最大限に引き出すことが大事なのである。
ここで「漢字の読み方が5カ所分からない」と生徒が質問を持ってきた。
ある程度の緊張感が醸成されていれば、5個の答えを私が一気に教えても、その生徒は「覚えないとマズい」と思って自席に戻り鉛筆を握るまで短期記憶を持続できる。
ところが、本人に緊張感がなくダラっとした空気に支配されていれば、何度同じ答えを聞いても短期記憶に残らずに、何度も聞き返すことになる。
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