浸透する時間をみる

これも大事な指導法のひとつで、一人ひとりの生徒によって「浸透する時間」が異なる。ここを考慮しなければならない。

話のスピードであれば、相手の理解力に応じて早口でも大丈夫か、ゆっくり話した方が伝わるのか、使い分ける必要がある。吸収力の高いスポンジもあれば、時間をかけて少しずつ吸収するスポンジもある。

反復学習の場合、かける時間が短くても回数をこなせば習得する生徒もいれば、回数は少なくても浸透するまでの時間が人一倍必要だから、日にちをおいて繰り返した方が習得しやすい生徒もいる。

この生徒には浸透時間がどの程度必要か、その見極めもまた指導者にとっては欠かせない。

—(引用ここから)
羽仁もと子さんは、赤ん坊が授乳の時間ではない時に乳を欲しがった場合の対処の仕方について、「決まった時間になるまでは絶対に与えない」というのも、「欲しがるときにはいつでも与える」というのも、両方共に良くないとし、「与えるべきかどうか迷ってオロオロする」というのはもっと良くないと言っています。(『おさなごを発見せよ』羽仁もと子著・婦人之友社)

決まった時間以外には絶対に乳を与えないというのでは、赤ん坊が本当にお腹が空いているときには、実情を無視した対応になってしまいますし、欲しがるときにいつでも与えていれば、赤ん坊は本当に乳を必要としていないときに、甘えや感覚的な欲望の増長を覚えてしまうからです。ではどうするのかと言うと、「赤ん坊が生命の要求として乳を欲しがっているのかどうかを見極めて、与えるかどうかを決める」と説明していますが、これこそが母親の内側からくる智慧のはたらきなのであって、決して知識としてマニュアル化することはできないものなのです。

『黎明』(葦原瑞穂・著、太陽出版)
—(引用ここまで)

浸透時間の見極めは、まさにマニュアル化できない。感性なきAIにも対応できない仕事術である。

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