イリュージョン作戦

人間は基本的に「飽きる」動物だ。よほどの集中したゾーンに入らない限り、何時間も一つのことを取り組み続けるのは難しい。したがって、集中力をつける取り組みも、その前提に「飽きる」という人間の特性を踏まえることから始まる

中学生もそうだが、特に小学生。生徒にもよるけれども、多くは1コマ60分の定時でおわる指導時間の割には消化しているプリントの量は多い方かと思う。

実際、毎回の連絡ファイルには宿題のプリントと使用済みのプリントをそれぞれ分けてはさんでいるが、使用済みのプリントもそれなりのドサッとした厚さになっていることが多いだろう。

これは先ほどの「切れ目をつくらない」プリントの渡し方と、【算数初見プリント→国語漢字プリント(その間に算数丸付け)→算数プリント直し→パズル(その間に漢字丸付け)→算数初見プリント】のように異なるコントラストの教材を互い違いの構成にして生徒に解かせることである。(小学生においては公文式の市販プリントを使用している場合など、宿題の順番を番号順ではなく新鮮な印象・気分で解ける順番に組み替えてクリップ留めしている)

このように、入室して生徒が新鮮な気分の時に新しいプリントを、15分程度経過したらプリント直しで生徒の心理的負担を軽減する(新しいプリントよりも直しの方が問題数が少ないから)、パズルを喜ぶ子は多いからテンションが落ちそうな場面でパズルを数枚入れてテンションを引き上げる、最後に「これを終えたらおしまい」と伝えながら新しいプリントを一定量渡す。

生徒は「おしまい」という言葉が好きだ。「そうか、これでおしまいか、帰れるんだ」という喜びの気分を利用して、少しハードルの高い問題をゴソッと出題する。中途半端に解いたらやり直しをさせられる、だからちゃんと解く。でもこれで終わる。という風に、生徒の持つ心理を読み解き、いかに最適の場面で最適の教材を提供できるかがこちらの腕に掛かっている。

そしてこういった一連の流れを通して、生徒に問題量をこなさせる。量をこなしながら質を確保する。という風に、集中力と学力が一石二鳥で得られるようになるのだ。文字にすると文字にした行動しか読み取れないが、この一連の仕事は実に奥が深く、まさに自由自在であり、おもしろい。「構成の妙」の世界であり、私は「イリュージョン作戦」とこの仕事を始めた20年近く前から銘打っている。

※追記メモ
◎教科や扱う内容を切り換えることが気分転換であり、中途半端な5分~10分の小休憩は気分がだらけるだけで基本的に無意味。集中とは、切らせない大人側の工夫に意味がある。
◎特に小学生。市販のドリル教材を購入したら綴じ目をカッターナイフでバラバラにし、混乱しない程度にランダムに引き抜いてプリント化して使用すると使いやすい。
◎少なくとも問題集1ページ目から順番に解き始めるのは大人でも眠くなる。ということを大人は理解する。