再建の本質は企業も生徒も同じ

昔のアスター工販を思い出すと、トップは「社員は自発的にどんどん働け」「もっと責任感を持て」などと言っているだけでした。経営者としてずいぶん無責任だったと思います。

経営戦略とは端的に言って、激しい企業間競争にどうしたら勝てるかであり、トップはそのための「絵」を組織に提示し続けなければなりません。その絵が示されたうえで、改革とは上から下への「魂の伝授」に他ならないと思います。

その魂とは何でしょうか。私は事業を先導する経営者にとって、あるいは経営者的人材の育成において、もっとも重要な要素は「高い志」であると思います。

『V字回復の経営』(三枝匡・著、日本経済新聞出版社)~P.423-424より

「社員は自発的にどんどん働け」と言われても、その社員としては実際に何をどう動いたら良いかが分からない。具体的な方法を知りたい。

同じように「生徒は自発的にどんどん勉強しろ」と言われても、生徒としては何をどう勉強したら良いか分からない。

そこで、実際の行動方法を伝え、現場がその行動を実行出来ているかどうかをチェックするまでが経営者であり指導者の役割である。

この本では骨子の例として
◎ボトムアップでは真の改革が出来ず、トップが意志貫徹して改革を主導する
◎問題点を全てあぶり出し、現実を直視して反省する
◎全社員が商売の流れ「創って、作って、売る」を意識する

を挙げることが出来るが、

これを指導者論に置き換えると、
◎無責任にならないよう、一人の先生が貫徹して一人の生徒を主導する
◎生徒の現状と課題を具体的に把握する
◎今後の進路、将来の見通しを意識した上で現在の勉強を設定する

となる。

<トップはそのための「絵」を組織に提示>というのは、その生徒が改善または乗り越えるべき課題を指導者が提示すること。当塾であれば連絡ファイルに「雑な仕事では先に進めない」と書いたりするが、これは反対に「仕事が丁寧になれば先に進めて学校進度の対応も容易になっていく」と暗に言っている。

<もっとも重要な要素は「高い志」>は、指導者は「生徒の将来をより良いものにしたい」「生徒の人格を高めたい」「目に見える形で成績を上げたい」と先導し、生徒は「自分の将来をより良いものにしたい」「更に成長したい」「学力を高めたい」と、それぞれが目の前の仕事に全力で向き合うことが出来れば「志」となり、人生において向かう所、敵無しとなる。

企業の再建も低学力の生徒の再建も、根底に流れる本質は同じで、その解決策は「人としての基本的なところの習慣づけ」「過去・現在・未来を俯瞰し、成長志向を持つ(時間軸)」「社会の中で自分の立ち位置と役割を自覚する(空間軸)」で、目指すべき山の頂上は極めてシンプルである。