別業務で移動する際は基本的に飛行機を使っている。
座席は必ず最後尾を選ぶ。
最後尾を選ぶ理由は、誰からの視線も掛からない(息も掛からない)ことと、1985年の日航123便の墜落事故で生存していた4名が後方に座っていたためである。
さて、
コロナ禍で機材が小さくなり、伊丹~羽田線でもダイヤによってはE90のような従来地方路線でしか乗る機会のなかった小型機が運用されるようになった。小型機になると、後方座席と壁を隔てて更にその後ろのCA(客室乗務員)の座席が大型機に比べて近くなる。
近くなって残念なことがある。表裏なく常に模範的なふるまいをされるCAの方が大多数な一方、揺れや着陸前の全員着席時にCA同士でペチャクチャと業務に関係のない私語を延々続ける者も少なくないのだ。
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「凡事徹底」という言葉がある。
当たり前のことを徹底的に行うという意味だ。
「凡事徹底」が無いと、客の前では立派なように振る舞うが、裏ではだらしがない。
更に
「慎独」という言葉もある。
四書五経のひとつ『大学』に収録されているもので、誰も見ておらず自分一人しかいない場所でもきちんとすることを「独を慎む(どくをつつしむ)」という。
先ほどの後者のCAは、会話が後方座席の客に筒抜けになっている時点で「慎独」どころではないのだが、今はむしろ客の方が機内での会話を控えており、会社が私語を制御出来ていないとか、そういう輩に対してコロナから自分の身を守らねばならないとか、いろいろな意味で危機的である。
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そんなこんなで先週の金曜日。
日中の京都での用事を終えて、塾開始まで残り1時間。まだ食事を済ませていなかったから、天満橋OMMビルの地下の喫茶店に駆けこんだ。
ガラガラの店内で、店員のお姉さんも一人しかいない。
しかし、このお姉さんがすごかった。凄いというのは「凡事徹底」の意味だが、マニュアル通りと言えばマニュアル通りなのだろうが、無表情な訳でもなく、わざとらしい訳でもなく、一つひとつの発語、動きを着実に、丁寧にこなしている感じ。手を抜いてもいいような場面で手を抜かない。意外と真似できそうで真似できない仕事ぶり。
恐らく大学生のアルバイトだろうが、こういう子がうちの塾にいたらメチャクチャ伸びるだろうなあとか勝手に思いながら、「凡事徹底」という言葉がこの店員の姿を通して私の頭に浮かんできた。