高槻中学校・高等学校(高槻市)

【アクセス】
阪急高槻市駅を南側に出て、コメダ珈琲と鼓月のあいだの「阪急高槻南商店街」を八丁畷交差点に向かって進む。交差点の歩道橋を渡って南、駅から歩いて550m(7分)で高槻中学校・高校の正門に到着。

【歴史】
本校は昭和15年(1940)、大阪医科大学初代理事長の藤堂献三氏が中心となり、北摂地域住民の学校開設要望に応える形で設立。旧制高槻中学の創立委員長には初代高槻市長であった礒村弥右衛門氏が就いている。

昭和40年代には学校運営の厳しい時期もあったが、その後の生徒数増加による公立高校でまかなえなくなった生徒の収容、そして私学ブームに乗って平成22年(2010)からは学校改革に着手。平成26年(2014)には大阪医科大学と法人合併、平成28年(2016)からは「学校法人大阪医科薬科大学 高槻中学校・高等学校」となった。

【臨時休校中の対応】
授業の遅れを発生させないため、大阪私学屈指の設備力を生かしてオンライン授業の教員研修を迅速に実施。生徒全員がiPadを持ち、4月14日にはZoomによる同時双方向授業を実現させ、先生方の出勤も制限される中、困難な状況を知恵と工夫で乗り切った。登校日には全生徒が、本校OBから提供されたフェイスシールドを着用した。

【グローバル教育】
文部科学省のSGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)指定校となり、2020年度が5カ年指定の最終年度。GAコース(Global Advanced)ではSGHの理念を継承し、同一のコースから例えば法学部と薬学部といった、一見異なる進路を導くような「多様性」を志向している。

英語の授業は本年度の中1よりケンブリッジ大学PRESSの「Better Learning Partner」に全国初で参画。教科書やケンブリッジ英検などケンブリッジ大学が出版する教材に沿った英語授業を展開する。これは、文部科学省の入試改革がブレても本校のカリキュラムが左右されないメリットを見込んでいる。

【サイエンス教育】
2014年に文科省より指定されたSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)は2019年より2期目を迎えている。同一法人下にある大阪医科大学・大阪薬科大学と連携して、基礎医学講座・医学部実習・地域医療体験実習がプログラムされる。GSコース(Global Science)はSSHと高大連携が核になっている。

回り道であっても様々な「本物」との触れ合いを通して、大学進学ありきではなく、まず現在の自分と「本物」との歴然とした差を感じさせるようにしている。他校にありがちなサイエンス教育ではなく、高槻ならではの最先端、「突き抜けた」生徒を育成したい、と工藤剛校長は語る。

昨年は「科学の甲子園」に出場し、府大会で優勝。「宇宙エレベーターロボット競技会」では全国大会に出場した。

【クラス編成】
中2までは全員がGLコース(Global Leader)に在籍し、中3からGA・GS・GLの3コースに分かれる。原則として中3以降のコース変更は不可。

高校募集のない、完全中高一貫校である。1学年270名で、男子180名・女子90名。共学化されたのは2017年度からで、現在中1から高1までが共学、高2・高3は男子のみの在籍。1クラスは45名。

男女比180:90にはこだわりがあり、男子に比べて女子の方が成長が速いことから、「中学の伸びは女子」「高校の伸びは男子」に鑑みて、入学当初の存在感の強い女子を少なめにして、成長の遅い男子を多めにしておくことで、男女のバランスと相乗効果が最適に保たれるとのことである。男子の多い共学校に飛び込んでくる女子は強いという見方もあるようだ。

【部活動】
活動日は運動系・文化系ともに週3~4日まで。活動時間は最大でも週10時間迄のため、全国レベルを目指す運動系はアメフト部のみ。

【学修インタビュー】
年度末の三者面談では、全生徒が保護者と担任の前で一年間の学習と活動についてプレゼンテーションを行う。

【中学入試】
今春の合格者のうち、A日程では男子の76.5%が入学、女子の65.9%が入学。辞退者の大半は京都の洛南高校附属に進学している。

共学化以降、兵庫方面よりも豊中・吹田・高槻エリアからの志願者が増加。男子は4年連続で志願者を増やしているが、女子の志願者は2019年比で2020年は横ばい。

オープンキャンパスはソーシャルディスタンスに基づき定員を減らすが、各回受付開始から1時間以内には満員となっている。

【新校舎】
さて。最後に目玉の新校舎。
大阪医科大学との法人合流により、隣接していた医大キャンパスの相互利用が可能となった。垣根を取り払い、2016年よりキャンパス整備事業が開始。2020年4月に全ての工事を終えた。

完成した校舎は口の字で回遊性があり、中庭を囲む。景観設計された中庭は夜間の入試説明会でライトアップされ、訪れた保護者の心をつかむ。

正門向かいの西側に本館、南館には図書館と講堂、サイエンスストリートが配置される。サイエンスストリートは全長100mの廊下の両側に物理教室2、化学教室2、生物教室2、地学教室が配置され、SSHの補助金もあって高度な理科実験設備が整えられている。廊下は壁一面がホワイトボードになっている箇所があり、他のSSH指定校と合同でポスター発表が開催されることもある。

職員室の隣には生徒がいつでも質問できるコミュニティスクエアを設置。許可制で最長19時まで自習が可能。本校は基本的に自宅学習を推奨しているので、許可を取っていない生徒は18時下校。

日本文化室という大規模な和室もあり、靴下を履き替えなければ部屋に上がってはならぬ、と。

【図書館】
図書館が凄すぎるので、図書館だけ別項目で書く。
蔵書6万冊の図書館は、新校舎の目玉中の目玉であり、本校を見学する際はこの図書館だけは絶対に見るべきである。

「学びの森」をコンセプトに1階が図書館、2階が閲覧スペースとなり、吹き抜けの壁面にも本がずらりと並ぶ。日経、読売など主要な新聞、鉄道やスポーツなど最新の雑誌から、地元の歴史書など郷土資料も置かれ、公立図書館顔負けのラインナップである。

閲覧席には緑色のランプが座席ごとに配置され、クラシックで木調の落ち着いた図書館にアクセントの色合いを添えている。

館内の奥にはアクティブラーニングコモンズという円形のプレゼンテーション室、それを取り囲むようにミーティングデスクが配置され、探究型のディスカッションに利用される。その隣には本の迷宮と言ってもよい、四方と通路を本に囲まれた空間があり、本好きの生徒はそこに入り浸っているという。

【校舎その他】
高い天井の廊下は配線がむき出しになっており、設備の更新がしやすく、時代に応じた新しい取り組みに対応できる設計。

校舎を4階建てとしたのは、緊急時に生徒全員が5分で避難できることを目指したため。海外大学を模した正面玄関前の時計塔は4階を突き抜けて、周辺地域からもよく見えるシンボルとなる。

あとはお手洗い。ウォシュレット完備だけでなく、最近の生徒の事情に合わせてノイズ発生のための「音姫」も設置している。これは校舎案内して下さった先生も「そういう時代になってしまったもので…」と苦笑い。

【まとめ】
校長の工藤剛先生がこれまた頭脳明晰な方で、講演中何も見ずに「〇年の卒業生は〇名が」といった細かい数字まで次々に述べられている姿は、さすが名門校の校長と、その格の違いのようなものをまざまざと感じた。自分がこの学校を牽引していくのだ、という誇りも強く感じられ、大阪を代表する名門校とは斯くなるものかと強く感銘を受けた。

教頭は3人おり、その内のお一方「平沢真人」先生が校舎案内をして下さったのだが、スマートな姿と明瞭簡潔な説明のことばに「(失礼ながら)カッコいいな~~」と感嘆しきりの私であった。学校の先生にここまでスマートさと毅然とした凛々しさのような、独特のオーラのようなものを感じたことは私自身初めてではないか、と思うほどであったが、実は平沢先生は箕面の聖母被昇天学院中・高(現アサンプション国際中・高)の元校長を務められた方であったことを知り、腑に落ちた。

本校は一言で「格の違い」を感じる学校であった。「本物」の教育環境を実現するための設備投資も他の私学が真似の出来ない医大を系列校に持つ財政力あってのことだろうが、工藤校長、平沢教頭といった魅力がにじみ出ている「教育者」という称号に相応しい先生方が本校を引っ張っておられることも、盤石な名門校として本校の歴史に刻まれる1ページと成すのであろう。

(7月29日訪問)

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