手を動かし、感覚をつかむ

使用するメディアで記憶力や脳活動に差

教育やビジネスなどにおいて、経費削減・効率化を重視して使用メディアのデジタル化が進んでいるが、脳科学の根拠にもとづいて創造性などを発揮させるために、あえて紙のノートや手帳などを用いることで、本来求めるべき成果を最大化させることができると言える。

デジタルの画面は表示する領域が限られており、元の画面を消さないとタスクを切り替えられないが、紙に書いたことはいつまでも残るから、その紙を目の前に置いておけばいつまでも視覚に印象づけることが出来る。視覚から意識へ、アナログの方が潜在意識に働きかける力が強いのだろう。潜在意識にじっくりと考えさせて、やがて思考にアウトプットさせる流れ。

あとは同じ文字を書くことでも、キーボードを押すだけよりも鉛筆を動かした方が手そのものが動くから、脳を刺激しやすい。

例えば、JRの新快速に乗って先頭車両で運転台を見ていると、いまだにハンドル式のレバーを前後にガチャガチャ動かしながら運転している。運転システムそのものはデジタルになっているから、別にボタンひとつでも走行できるはずだ。

それなのに何故アナログのハンドルを残すかといったら、それがアクセルとブレーキの「感覚」を人間に強く意識づけ出来るからだ。人間が物理的な肉体を持った存在である以上、アナログから離れることは永遠に出来ないのである。

さて、
ここからは太平洋横断再チャレンジ、出発2か月前の辛坊治郎さんの話。

(以下転載)

前回失敗した時の船は、他人様の持ち船でしたから、
初めから「自分の手足」という感覚が無く、
結果的にそれが失敗の遠因になったんじゃないか
と反省しています。

その意味で、
今回は、この大きな船を自分の手足の延長として感じるために、
どうしても一人で向き合う時間が必要で、
とにかく「一人」にこだわって作業を続けるしかないんです。
今、ようやくデッキ上の全てのロープの点検が済んで、
これから船内作業に取り掛かります。
帆走自体は45年間ヨットに乗っていますから
何とかなると思いますが、
船の癖等、船の「感情」に相当する部分の感覚を
今必死につかもうとしているところです。
(出典:辛坊治郎メールマガジン 第517号・2021年2月12日)