大手塾と個人塾のちがい

本町通を歩いていたら、東中学校の男子生徒の会話が聞こえてきた。

「船場の地下街に食べる店あるやんか。なんか、おじさんが一人でやってるみたいな」

「俺が行きたいのはああいう店やないねん。俺はチェーン店に行きたいねん。チェーン店がええねん」

・・・その子がひたすら「チェーン店」を強調しているのが面白かった。
恐らく、個人経営の飲食店が集まる、船場センタービルの地下街のことを言っているのだろう。

そんな会話を聞きながら、
大手塾と個人塾の究極の違いについて思い浮かべてみた。

まず、客の立場としては、親自身の思い入れがない限り、最初から個人塾を選ぼうとは思わないだろう。まずは大手塾へ行き、そこで初めて何か思うことがあって個人塾へ転塾する。

私でさえ、見知らぬ土地で飲食店を選ぶとき、一か八かで地元の個人店を選ぶことはない。
食べログで口コミ評価が高いとか、よほどの動機がない限りは無難なチェーン店を選ぶ。長い物に巻かれたい、先の中学生の気持ちもよく分かるわけだ。

さて、個人塾の先生も、元は大手塾での勤務経験を持つケースが大半だろう。かく言う私でさえこういうマインドだった、ということを以下自白してみるが、大手塾の場合は先生が多数いるから、その先生自身が「この生徒は他の先生がどうにかしてくれるだろう」と勝手に安心してしまう。

まさに無意識の依存である。

個人塾の場合は先生の人数にもよるが、私のようにひとりで全てのオペレーションを担っている者としては、誰にも頼れない「背水の陣」感が強い。「自分が動かなかったらどうにもならない」という重い十字架のような当事者意識を背負わざるを得ない。

組織の中では「誰かがどうにかしてくれるだろう」という、一人ひとりが神輿を担ぐのではなく神輿にぶら下がる状況も起きやすくなり、それが生徒のこととなれば、「〇〇君は理科が得意だから、××先生が伸ばしてくれるはず」「担任の△△先生が〇〇君の進路を考えているはず」と、無責任なたらい回しが容易に起きてくるのである。