集団指導と個別指導のちがい

小学校の1クラスあたりの人数を35名以下にしましょう、というニュース。

まあ、一般論として人数が少ないに越したことはない。私の印象でいえば、1クラス25名。ここまで下げなければ事実上の効果は見込めないと考えているが。

さて、
個別指導といえば、大手学習塾においては「1対2」が料金的にも一般的なスタイルになると思うが、個別指導の元祖、明光義塾のように生徒の座るブースを仕切りで分けて、それらの間を先生が移動する。90分授業であれば、それぞれの生徒に45分ずつ配分されることになり、先生が相手してくれない45分は演習(または天井を見てボーッとする時間)となる。

私が大学3年の時に、明光義塾から分裂したエルヴェ学院という個別指導塾の講師をしていたとき、まさにこの形で「中3理科」と「高1国語」の1対2授業を受け持つことになった。当時はアルバイトとしての講師スキル。今考えても無理筋である。(講師は大学生が中心で基本的にシフト制であるので、当日にならないと担当する生徒が判明しない)

ちょっと話がズレてきたが、
ここから本題。1クラスあたりの人数が少ないに越したことはないが、学校の先生がリタイアされて個別指導塾の講師をされる場合など、「集団指導マインド」が抜けていない先生が少なくなかったりする。

仮に、1対2の形式で生徒が同じ学年、同じ教科であったとする。ここでそのタイプの先生は、「カリキュラム」を前提とした「個別指導という名の集団指導」を提供する。「カリキュラム」というのは同じ教材・同じ進度・同じスピードを2名の生徒に対して実施するということだ。

これは紛れもなく「集団指導」であるが、塾の看板としては人数が少ないというだけで「個別指導」を謳うことが出来る。

計画表に普遍的に描かれたカリキュラムに基づくのが集団指導、その生徒自身に基づくのが個別指導。これが最大の違いである。

当塾は、業界的には「集団個別」形式という。
ブースで生徒の机を区切るのではなく、ソーシャルディスタンスをとって生徒が一つの大きな机に並んで座る。見た目的には集団のように見えるが、そこで行われている進度・教材・スピードは一人ひとりの生徒により全く異なる。これはまさに個別指導であり、江戸時代の寺子屋そのものである。

上位学年の授業内容が聞こえてくることもあるし、他の生徒がピリッと緊張感を持てば、自分にもその温度が伝わってくる。中途半端に甘やかされずに刺激も受けられるのが集団個別形式のメリットだ。

この話の冒頭に25名という数字を書いたが、
先生一人で担任として生徒を細部まで観察・把握できるのは25名まで、という意味だ。

集団授業で机間巡視を使いながら、個別指導の要素を持たせる授業が出来るのは10名が限界だと私は思っている。だから、学校で習熟度別クラスで授業を組んでいる場合、10名程度でクラス編成がなされているとすれば、それは信頼に足る(きめ細かな)習熟度別授業が出来ていると見てよい。

生徒の個性に応じた個別指導という意味では生徒数を減らすに越したことはないが、新出単元の導入授業など一方通行で提供可能な内容に関しては、オンラインでも、大学のように100名単位でもよい。

何が何でも人数を減らせばよいという訳ではなく、その目的に応じて人数を柔軟に調整できる体制が大事だというのである。