苦手なら「一つ覚え」で

中学2年の連立方程式を学習する際、
器用な生徒ならば「加減法」と「代入法」を使い分けることが出来るが、器用でない生徒には両者の使いこなしは求めず、どんな場合でも「加減法」に持ち込ませることで【必ず自力で解ける】という自信を養わせる方が大切だ。

{ x + y = 10
{ x - y = 2

↑は加減法でそのまま上下の式を足せばよい。x=6、y=4が解となる。

{ x =10‐y
{ x - y = 2

↑は元の式をちょっと移項しただけなのだが、
不器用な生徒はこの時点で既にパニックを起こす。

通常ならば
下の式の「x」に「10-y」を代入して

(10‐y)‐y=2

とする代入法で、yの1次方程式に持ちこむ。
しかし苦手な生徒に「これは加減法」「これは代入法」と分類を説いたところで、自力で見分けが出来る地点までたどり着かせることは困難だ。

だから
{ x =10‐y
の右辺の「-y」を移項して

{ x + y = 10
{ x - y = 2

にすればいつも通り解けるよね、という安心感を生徒に持たせて、全て加減法で解かせる。

場合によっては代入法で解いた方が楽な場合も多い。
しかしそれは【器用者の論理】であって、器用でない者にそれを求めるのは酷だ。

【シンプルな方法を一つだけ】教え、それを使えば【必ず自力で解ける】のだよ、という【泥臭い方法】を訓練しておくと、生徒は分からないからいいや、と答案を空欄で投げ出すこともせず、自分で解く力が養われる。これこそが文部科学省が定義するところの「生きる力」に繋がるだろう。

もう一つ、高校生であれば「余弦定理」。

a2 = b2 + c2 − 2bc cosθ

という公式から発展させた、

cosθ=(b2 + c2 – a2) / 2bc

があるが、これも器用でない生徒には使い分けを教えず、元の公式「a2 = b2 + c2 − 2bc cosθ」の一本で全てが済むようにさせる。

大人もそうだが、新しいことを学ぶ時に始めから「あれも」「これも」と細かく定義づけされても頭の中に入ってこない。まずはシンプルで骨太なひとつのことを学んで、その方法で解きこなす経験を重ねるうちに「なるほど、これが代入法ね、確かに便利だわ」と、ジワジワ広い方法が自分の中に入ってくればよいのだ。