現場の皮膚感覚を失った小学教材

陰山英男先生のツイッターより。

「学校の指導は、理解を必要以上に重視して、細かく理屈っぽくする傾向があります。しかし繰り上がりなどは学習時間が相対的に短く、低学年の計算力の向上不足になりがちです。はじめての計算を年長さんにやってもらうのは、そこに陥らない予習のためです。そしてます計算で習熟を促します。」(11月3日)
https://twitter.com/kageyama_hideo/status/1323358474546241536?s=27

「この時期の子どもにとっては、繰り下がらない引き算が実は最大の山場という事実がほとんど認識されず、教材の理屈で指導されてるところが問題なんですよね。子どもの現実を土台に指導しないことで、劣等感を植えつけてしまっていることに気がついてほしいと思います。それが低学力の本質だったり。」(同日)
https://twitter.com/Kageyama_hideo/status/1323431552257159168?s=20

今年度改訂された小学生向けの教材を使いながら思うことは、ますます生徒の混乱に拍車が掛かるだろう、という一点。

例えば小学4年の「小数の表し方」では単位の変換が出てくる。
「9kg90gをkg単位で表しなさい」という問題。これを生徒に自力で解かせるのは、かなり骨が折れる。小学生の場合、情報処理の結果でなく、多くは勘で答えようとする。そして「9000g=9kg」「900g=0.9kg」「90g=0.09kg」だから「9kg90g=9.09kg」になるという処理を順序立てて書かせようとする間に学校の授業はどんどん先に進んでいく。

次に、数直線の7.94を指すメモリを読んで「整数と小数の足し算の式で表しなさい」とある。
そもそも数直線のメモリを読み取ることが苦手な生徒も一定数いるのに、それを「7+0.94」に分解させるのは、この塾通信でさらっと書いてしまえば何てことのない問題に思えるが、現場で生徒と対面する感覚としては決してハードルが低くない。

この問題は高校数学の「整数部分と小数部分」を念頭に置いていることがプンプン臭ってくるのだが、今の小学生向けの教材は指導側が「これは今のあなたに必要」「これはあなたにはまだ早い(年齢と共に解決していくことだから今は無理して習得する必要はない)」という選別を一問一問していかないと、全問片っ端から触れさせていたら本当に<溺れて>しまう

誰もが大阪星光や四天王寺に行くわけではないのだ。
そういう現場の皮膚感覚なるものを、今の小学教材は完全に失っている。