『1.5次入試??』
当塾が大阪に移転して、まず意味が分からなかった入試制度のひとつだ。大阪の私立高校入試では「1次入試」と「2次入試」の間に「1.5次入試」が存在する。正確に言うと、「1次入試」と「府立高校入試」の間。
例年の時系列で見ると、
◎私立1次(1/31頃出願締切、2/10【一斉】入試、2/12頃発表)
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◎私立1.5次(2/14頃出願・入試・発表)
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◎府立特別選抜(2/17出願締切、2/20入試、3/2発表)
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◎私立1.7次(3/3頃出願締切、3/6頃入試、3/7頃発表)
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◎府立一般選抜(3/6出願締切、3/11入試、3/19発表)
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◎府立2次(3/24出願・入試、3/26発表)
◎私立2次(3/25頃出願・入試・発表)
本町の相愛高校で例年実施しているような「1.7次入試」も驚きのネーミングであるが、首都圏には「1.7次」はおろか、「1.5次」入試なる概念そのものが存在しない。
さて、注目すべき点は、私立の1次入試がR2年度であれば2/10(月曜日)に統一されている所だろう。
首都圏であれば、私立高校入試は1次入試を複数日で行う。
表のとおり、首都圏では入試日程がバラバラなのが分かる。つまり、1次入試の中で「A日程」「B日程」「C日程」のように、受験したい高校を複数併願することが出来、当然特定の高校に人気が集中することになる。反対に東京都心部の女子校のような人気の低い高校には受験生が集まらない。
ところが、大阪では入試日が統一されているため、大阪の私立高校同士の1次入試の併願が出来ない。
なぜ、大阪では1次入試日を統一して、1次入試の併願をさせないのか。当然、首都圏のように1次入試を複数回実施すれば、各校の競争が発生し、先述のように人気のある学校と人気のない学校の差が如実に表れる。
ここで、私立高校全日制の定員充足率(入学者数÷募集数)を比較してみよう。
◎千葉県のH27年度で定員充足率が100%以上の学校は54校中32校で59.2%(私学協会資料)
◎大阪府のH31年度で定員充足率が100%以上の学校は96校中47校で49.0%(大阪府資料)
首都圏の学校で、定員割れを起こしている学校といえば、よほどの人気のない学校または学力的に低い学校、何らかのトラブルが近年発生した学校ということになるが、大阪府では名の知れた学校でもギリギリ、または定員割れを起こしている学校が少なくない。
つまり、大阪では生徒数に対して学校数が多い、または学校数に対して生徒数が少ない、故に各校で生徒の奪い合いの状況が起きやすい。
そこで、大阪では私立の「1次入試」の実施日を統一することで、学校によっては中学・高校間の事前の入試相談も踏まえて、私立高校にまず【均等に生徒を割り当て】受験させるようにする。
そのため、難関校とされる高校でも「専願=182名受験、180名合格」「併願=388名受験、387名合格」のような入試状況であったり、各校で4レベルくらいに分けた学力別のコース編成で「回し合格」をさせることで、同じ高校の上位のコースを受験しても、その下のコースに何だかんだ言って着地させるという大阪特有の高倍率にならない入試が実施されている。
「1次入試」の出願状況を見ながら、ここで各校初めて実施の有無が決定され、1月末になってようやく発表される「1.5次入試」。本来ならば、「1次入試」を複数回実施して、首都圏のように競争を煽りながら自校で一人でも多く合格させたいところを、大阪私立中高連の【私学はひとつ】の合言葉の通りに、「1次入試」で受験生を各校に均等に振り分ける。
そして、複数回入試をしたくてウズウズしている高校にやっとGoサインが出て、募集が解禁されるのが「1.5次入試」なのである。
つまり、大阪私立高校の「1.5次入試」とは、受験生のために考慮された制度というよりも、私学同士に過度な競争をもたらさず、どの学校も横並びに生き残るために苦肉の策で編み出されたものである。
どこかでこんな話を聞いたことがある。
「江戸時代の後期から日本の中心が江戸に移り、明治時代には天皇も東京に遷都し、関西では中心が空っぽになるような喪失感を味わいながら、特に大阪では大阪の中で皆で競争を煽ったり、足の引っ張り合いをするのではなく、皆で助け合いながら大阪は大阪で自己完結して生き延びる道を選んだ」
この話が正しいかどうかは分からないが、この話に照らし合わせると、首都圏は競争社会で他人を蹴落としながら弱肉強食で生きて行かざるを得ない世界だけれども、大阪は【皆が共存する】という考え方が根底にあるので、現在においても私学は私学で共存しようじゃないか、ということでその私学同士の互助的な象徴が「1次入試」の統一実施であり、各私学に対する生徒募集の救済策としての「1.5次入試」なのではないか、と。
(※以上はあくまで当塾の仮説です)
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