10秒の間を授業につくるな

「武田塾」という大学受験向けの学習塾が全国展開を進めていて、『授業をしない武田塾』というふれ込みで自学自習を徹底的に管理するスタイルを採用している。

授業で先生がタラタラと講義を垂れても、生徒が本当にそれを真剣に聞いているのか?ただ聞いているだけで手と頭を動かさない時間を延々過ごさせるならば、授業をなくして一冊の問題集をもとに自分の手と頭を動かさせることを徹底的に管理して勉強させた方がよほど意味があるではないか、と。

この考え方は私も大賛成で、いわゆる「アクティブ・ラーニング」とはそういうことである。

KJ LABの場合は、指導時間中私がパソコンに向かっていることが多い。昔「先生はうちの子を放って授業中パソコンで遊んでいるのではないか」と言ってきた不見識な親がいたが、まったく的外れである。当塾では授業管理のために、独自のExcelデータに授業内容から生徒の様子から今後の方針からエピソードから、全部の情報を随時打ち込んでいる。そして打ち込みながらデータと会話し、次にこの生徒にどの教材のどの問題を指示すれば最も新鮮な気持ちで、集中して、効果的に指導が出来るかという戦略会議を授業と同時進行で断続的に行っている。

在塾生の面談では親御さんと3時間近く話をすることもよくある。一昨年は夜10時に面談を始めて、親御さんも私も話に集中しすぎて気づいたら午前2時、なんてこともあった。そんなに話すことがあるのか?と思う人もいるだろうが、一人の生徒の人格を表情、様子、答案の具合から読み取り、数少ない会話を経て生徒本人の適度な緊張感を保ちつつ、いかに的確な進路に導くことが出来るか、ということを考えながら日々ひとり戦略会議をしていると、いざ面談時に一人の生徒にまつわる様々な情報が噴出し、親御さんとの話題も多岐に渡って、豊かな面談が実現できるようになる。

これ、学習塾に関わらず一般企業における「顧客管理」の最高峰の考え方で、事業が成功している企業・個人事業主は徹底的に独自の方法で顧客管理をしている。

さて、
このパソコンに向かいながら、私は次の教材、次の問題をどうするか、次の一手をどうするかということに全神経を集中させていると言っても過言でない。そして次に指示する教材は緩急があり、構成に面白みがあり、生徒の脳裏に浸透しやすい順序にしていく。教材を切り替えることが刺激になり、脳が新たな展開に緊張感をもつのでわざわざ「●分休憩」といった無用な気分転換が要らない。休憩はその取り方を誤れば、時として害になる。大切なことは【教材と教材の切れ目の間に変な間をつくらない】ということだ。

生徒「先生、できました」
先生「ほう、丸つけしようか」
生徒「・・・(丸つけの間待機)」

こんなことをしていたら生徒の集中が途切れ、生徒の退屈が始まる。10秒でも無意味な間をつくったら、その授業は失敗する。

当塾が休憩を一切設けず、3時間でもぶっ通しで生徒の集中が持続するのは「次の一手」への精度を高めることと、「間」を絶妙な秒数で収めること。そうなるために「次の一手」を確実に考え、的確に構成していくという循環。例えば小学生でも当塾で扱う1回あたりの教材量(情報量と負荷)は、一般的な学習塾の2倍3倍どころではないだろう。量が質を生むのであれば、限られた時間に集中して処理能力を高めることが最適のはずだ。

とてもマニアックな話になってしまったが、
「間」の取り方は落語や漫才をはじめとする話術でも基本中の基本であり、流れを生かすも殺すもこの「間」ひとつに掛かっている。

この記事を書いた人