8/11セミナー『社会人になる前に知っておきたいお金の話』のダイジェスト

1ヶ月前のことになるが、神尾塾はじめての試みとして『お金』にまつわる中高生向けセミナーを開催した。ちょうど今年の6月に成人年齢を20歳から18歳へ引き下げる改正民法が国会で成立し、施行される2022年からは18歳で親の承諾なしにクレジットカードを作ったり、ローンを組んで借金することができるようになる。

今の中学2年生以下がこれに該当するのだが、学校でも塾でも中高生の段階でお金についての教えを受けることは普段ほとんどない。高校生で一部アルバイトを始める生徒も出てくるが、それを除けば高校を卒業して、予備知識もなしにいきなり社会の「お金」の濁流に流されていくのが常だ。(私もそのひとりであった)

そこで、専門家である税理士の先生をお招きして、中高生に『社会人になる前にお金について知っておきたいこと』をレクチャーしていただこうということで本企画がまとまった。

講師は、市川市で税理士・不動産鑑定士の事務所を開業されている山野邊佳利先生。中央大学をご卒業後、国税局・税務署で長年勤務され、ご家業であられた税理士事務所を改めて開業された経歴の方で、まさに税とお金のエキスパートである。
※山野邊先生ホームページ
http://yamanobe-office.c.ooco.jp/

不動産や相続のこと、またジョギングや心理学、太極拳など先生の幅広いご関心のことも含めて生徒に益することをどんどんお話しいただこうと私の中で妄想を広げるうちに収拾がつかなくなってしまい、企画段階では「神尾さん、○○の話題はまた次の機会にしましょう」ということの連続で、しぼりにしぼった内容で濃いエキスのような本番の2時間となった。

ということで、私なりに当日のダイジェストをまとめてみた。

◎自己紹介

◎お金の3つの機能
1.交換→お金と交換して何かをもらえる
2.価値測定→物々交換でなく価値が相対化できる
3.保存→いつ使っても腐らない

◎給料について(支給の内訳、控除の内訳)
※住民税:就職して1年目は0だが、2年目の6月からかかるので、2年目の手取りは少なくなる。
※財形貯蓄:会社でストックしてくれる分。
※会社員の場合、支給額のうち2割は控除されてしまう、2年目は更に税金が引かれてしまう。

◎貯蓄の必要性
ライフイベント(家を買う、病気など)のために
老後の資金は3,000万~1億円必要か
年金で生活できなくなる(自分でお金をためないと生きていけない時代)

◎質問力を養うことが大切

◎年収1,000万の人間でも貯金0円の人数の割合は1割か

◎貯蓄は難しい(貯金ができる人間とできない人間の違い)
「収入」-「支出」=「貯金」の考え方の人間は貯金できない ⇒使ってしまうお金(支出)がどんどん増えてしまう。
↓ 改善 ↓
「収入」-「貯金」=「支出(使えるお金)」 ⇒この考え方への発想の転換がないと、貯金できるようにならない。

⇒つまり、この話は【金に困る人生か、そうでない人生か】の境目を示している。

※手取り20万で20%を貯めると=4万円貯金できて、使えるのは16万円になり、月4万円の貯蓄×12ヶ月=年48万円が貯まる。
→これで3か月分の生活費の貯金を1年間でできることになる。
→40年間で見れば、約2,000万円の貯蓄が可能。

※自分で一度決めたルールは自分で曲げない(破らないで済む数字を決める)
※貯蓄して無駄になることは何一つない
※手取りのうち15-20%は貯金をする(最低でも10%、手取り20万であれば4万は貯金したい)

◎6万円のランドセルは高いか?
ランドセルが必要かどうかは子供が生まれた時に分かること

1年で1万円=1ヶ月で833円=1日で28円の貯金

これが出来ているかどうかで、将来困らない生活になるかどうかが分かる
(スマホは買ってしまうのに、なぜランドセルは高くて買えないと感じるのか?)

◎「全く分からないこと」を考えることも大事

◎日常の生活に必要なお金(1人暮らしを想定。1ヶ月分)の国による統計平均額
「1.食費」39,000→単身では外食が多い。2人では2人で4万で納まるか
「2.住居費」47,000→住む場所によって異なる(バス路線の地域は安くなる)
「3.水道光熱費」10,000
「4.家具・家事費」4,000
「5.被服費」6,000
「6.保険・医療」6,000
「7.交通・通信」18,000
「8.教養娯楽」14,000
「9.交際費」10,000
「10.その他費用」11,000

「合計」16.5万円(→これでも高すぎるのでは?)

※平均はあくまで参考。個人のぜいたくの価値観によって上記のバランスは異なる
※「8」「9」の線引きはあいまい、ぜいたくをしたから娯楽なのか、食べたから食費なのか

◎「平均」の概念は学生と社会人で異なる
学生にとっての平均は、「0点」から「100点」の中での平均
社会人にとっての平均は、例えば「10点が9人、100点が1人」。数字上では平均19点だが、実際は10点の人間がほとんど。だから一般に『平均は高く出るもの』と認識しておく」。また、社会人の場合は上下の触れ幅が広くなる(上限がなくなる)

◎志望校(相手)を知って、それに応じた戦略を組む

◎保険の種類・仕組み・必要性
これからは個人責任賠償保険の重要性が大きくなる。自転車事故の対策も必須に!
保険に入るタイミング(結婚した時、子供が生まれた時)

◎クレジットカード・借金について
お金はただでは借りられない
クレジットカードもほぼ借金である
リボ払いは利息が15%かかる

◎自己破産
スマホ買えない、クレジットカード作れない、住宅ローン作れない
「免責」手続きを取らないと借金は消えない。ただし「税金」と「他人への賠償(不法行為による)」は自己破産では免除されない。

◎年1回の海外旅行よりも毎日コンビニで300円の買いものの方がぜいたく!

◎試供品や試食品はなぜタダか?
企業にとっての広告宣伝費だから。また、客はタダでもらったから…と買って帰る。

◎まとめ買いが損だったことも有り得る
買わずに済ませたことの方がよほど得だったりする、買って使わないこともある
「買わないと損をする」⇒得をすることはあっても、損をすることはない!

◎「投資」より「貯蓄」が明らかに大事
利息は経済が発展しているから高くなる。利息が低いということは経済が発展していないということ。低利率の状況ではなおさら「貯蓄」が大事。

◎節約しているのに貯金できないのは、節約したお金を別に置いていないから
→他で使ってしまっていないか?

◎「みんなやっている」はまやかし
→「買わせる」商法にだまされるな。

◎自分にとって、それが本当に必要かどうかを考える余裕を持つ

◎情報の信頼性は?誰がそれを言っているか?が大切

◎保険屋、銀行屋は客に金を出させるプロ
「銀行に言われたから」ではなく、自分で本当にそれが必要と思ったか?その人が言っている内容を自分で確かめたか?

◎やりたいこと・なりたい自分の目標を立てることが必須
そのために何が必要か、何をすれば良いのか、なんとなくでも先のことを考えておくことが大切。

◎武井壮の言葉より
「自分はスポーツの練習をしているのではない、武井壮をどう作り上げるか、を実践している」

◎一歩でも半歩でも先を考えることが大切

とまあ、こんなところ。

【「収入」-「貯金」=「支出(使えるお金)」 ⇒この考え方への発想の転換がないと、貯金できるようにならない】
【節約しているのに貯金できないのは、節約したお金を別に置いていないから】

このあたりは私にとっても本当に耳の痛い話で、自分の身にせまった話はダイレクトに自分の腹に刺さってくるものだな、ということをこの日は痛感した。私の場合は教室の家賃を支払うために塾を営んでいるようなもので、そういった固定費(家賃、コピー機代など)を支払って、ちょっと余裕が出たかな、というところに個人事業税の納付書がやってきて「そういえばそうだった!」と慌てて入金する始末。そんなこんなのストレス?で最近オープンしたスーパーのベルクで閉店間際に「20%オフ」の商品を見つけては買いものカゴに入れてしまう、なんてことをしている内に貯金なんか出来るわけないよね、という典型的な貯金できない思考回路になっていることがまざまざと実感させられた。

繰り返すが、

【「収入」-「貯金」=「支出(使えるお金)」 ⇒この考え方への発想の転換がないと、貯金できるようにならない】
【節約しているのに貯金できないのは、節約したお金を別に置いていないから】

このようにそれぞれの自分なりの注目点をセミナーから1ヶ月経った今、改めて振り返ってみることがとても自分のためになるし、自分の日常がどうであるかを客観的にみつめる貴重な機会にもなっている。いや、私自身がそうだからだ。

山野邊先生は大変多趣味であられるが、この方のすごいところは、それぞれが分散して多趣味なのではなく、本業の税理士業・不動産鑑定士業にフィードバックされているところだ。私が先生の全てを把握している訳ではもちろんないが、例えば高齢者の税務相談時に、手のむくみにサッと気づいて、この相手は病気を経てきたのではないだろうか、現在の生活状況がどうなっているのか、ということを総合的に踏まえた上で適切な税務上のアドバイスをする、という風に、AI(人工知能)にはできないヒューマンな部分をフル稼働して、業務に当たられているということだ。

そんな部分も含めて、生徒には実際の知識だけでなく薫陶(くんとう)の部分でも伝わるものがある2時間になったのではないか、と思う。

※生徒感想文

※山野邊先生ホームページ
http://yamanobe-office.c.ooco.jp/