3つの分からない

生徒が発する「分からない」には3種類がある。

【1】習っておらず、本当に分からない
【2】ヒントを与えられれば分かる、の「分からない」
【3】考えもせずに、ただ「分からない」と言っている

指導者としては、生徒を見てこの3種類の見極めが瞬時にできなければならない。プロと素人の境目はここで決まる。よほど指導力の高い者であれば別だが、学生講師の段階ではこの区別は難しいだろう。生徒が「分かりません」と言えば、先生はホイホイと教えてしまう。これでは生徒の力がつかない。

【1】の場合は、勿論きちんと教えなければならない。黒板に解法を書いて、丁寧に説明すべきだ。【2】の場合は、生徒の「分からない」度合いに応じてヒントを出す。

ここで大事な考え方はこれ。

「昔から本当の教師は、決して手取り足取りして教えるようなことはしませんでした。なぜなら、何であれその人が自分で導き出したもの以外は、その人にとって真に役立つものとは成らないからです。従って教師にできる仕事というのは、生徒が自分自身で答を出せるように手助けをするぐらいのもので、このようにして生徒が答を出したときに初めて、教師も答を得ることができるのです」

このヒントの出し方がまた熟練を要するのだけれども、いかに的確に必要なヒントを出せるかどうかで指導の味わいが多分に変わってくる。

最後に【3】。問題文も読まず、考えもせずに「分かりません」と言ってくる生徒もいる。思考停止は最大の敵だ。「この子、考えていないな」と思ったら、すかさず「分かるよ」とだけ返事して突き放す。この突き放した結果、【1】の状態になってしまう生徒は突き放してはいけないが、その後【3】から【2】へ移行していくから、段階に応じたヒントを与えることで、自力で正答を出させるように仕向けていく。

自力で答えを引っ張り出すこと。この訓練で本当に力がつく。このあたりは昔の寺子屋のようにいつでも師弟が問答できる環境であることが必須だろう。神尾塾は昔の寺子屋を志向している。