漢字でも英単語でも、何かを覚えようとする時に、
例えば「練習 練習 練習…」「girl girl girl…」と同じ単語を何度も書かせる指導がある。これは実は愚の骨頂で、大体の場合、何度も書くことが【儀式】になってしまって本人の記憶には刷り込まれないものだ。
私も時と場合により「あえて」これをさせることもあるが、その場合覚えさせる練習よりも、覚えることをしなかったペナルティ的な意味合いで課している。
気をつけなければならないのは「書くこと」が目的ではなく「覚えること」が目的だということ。だから、何度も同じ単語を書くよりも【セルフ確認テスト】をする意識で練習するのが良い。
—
<方法>
漢字を120個覚えなければならないとする。
4ブロックに分けて、まず最初の30個をノートまたは白紙を使って【いきなり】テストしてみる。分からなくなっても手を止めずに先に進む。手を止めても分からないものは分からないのだから、止まる時間が本当に無駄。書き終えたらすぐに答え合わせ。丸付けをして、分からなかった所には赤ペンで解答を書く。「墾田永年私財法」の「墾」のような書きづらい漢字であればそこで何回か書いて練習してもよい。
すぐさま1回目のセルフテストを隠して、2回目を実施。分からなければ飛ばし、とにかく手を動かす。終えたら丸付け。そうして満点が取れるまで3回目、4回目と繰り返す。
時間がなければ間違えたところだけ2回目、3回目・・・としていけば効率は良いが、【記憶の引き出しを鍛える】ことが目的だから、セルフテストではその都度全問答えた方が好ましい。
最初の30個が完璧に書けるようになったら、次の30個へ。以下同様に繰り返す。全部で120個が覚えられたら、その日は終了。時間を置いて、翌日または翌々日に同様のセルフテストを行う。1日で全部覚えたから大丈夫、というのは駄目で、そういう場合は本番のテストで2~3%程度落とすことが多い。これを【詰めが甘い】と呼ぶ。
必ず睡眠を挟んで複数日かけてセルフテストを繰り返すことが必須だ。
—
これは小学生から大人まで、漢字でも英単語でも理社でも、実用的に実践できる。
ちなみに、以下は大人の活用法。
私の場合、例えば神社で安産祈願を執り行うとすると以下の祝詞(のりと)を奏上することになる。
—
掛介麻久母畏伎五穀大神乃大前尓 斎主○○ 恐美恐美母白左久 大神乃敷伎坐須此乃郷内乃○○尓住麻閉留 ○○伊
常母大神乃高伎尊伎神徳乎敬比戴伎奉礼留賀 先頃御恵乃随尓懐妊里侍里多礼婆 我賀大神乃広伎厚伎恩頼乎蒙里奉里低
真玉如須嬰児乃初声高久生礼志米給閉登 大前尓参出伝礼代乃幣帛献奉里低拝美乞比祈美奉留状乎
平良介久安良介久諾比聞食志低 今由往先 仮初尓母手乃躓足乃躓有良志米給波受 諸乃障害無久月満知日足良比低 安久穏尓生礼志米給布倍久
夜乃守日乃守尓守里恵美幸閉給閉登 恐美恐美母白須
(※低は文字化けのため人偏を使用)
—
祝詞では送り仮名も万葉仮名という平仮名を漢字に置き換えたものを使用してルビを振らずに読むことになっている。「大前尓参出伝礼代乃幣帛献奉里低」であれば「おほまえにまゐいでいやじろのみてぐらささげまつりて」となる。
さて、これをスムーズに読めるまで1回目、2回目、3回目と何度も繰り返す。息継ぎのタイミングも調整しながら大体10回程度は読むだろうか。ひとまず読みが完成したら、また翌日同じことを繰り返す。期限にもよるが余裕があれば中1日あけてまた繰り返す、と時間を置いて何度も刷り込みをすることで本番で「さも当たり前のように」読めるようになるのだ。
このように、学生時代に確立した練習方法が社会人になってから様々な業務で生かされてくる場面は大変多い。是非生徒たちには効果的な練習法を身につけてもらいたい。