真の”自己中”になれ

私が中学生の頃、認知症の祖母を自宅で介護していた。大晦日といえば当時まだ元気だった(その後認知症になったが)祖父とおむつをしている祖母のお腹を押して排泄させ、強烈な汚臭の残る部屋で紅白歌合戦を見たのを覚えている。

その祖母が、車椅子に座ってテレビを見ながら、よくテレビのスピーカーから笑い声が聞こえると一緒に笑っていた、ということを思い出した。祖母自身は、何が面白いのかということは理解していない。ただ、笑い声が聞こえると一緒に笑うという、耳から入ってきた音に対して同調しているだけだったのだろうと思う。

認知症と直接つなげるつもりはないが、塾内で生徒の行動を見ていると、自習を切り上げる生徒が出始めると、ゾロゾロとそれに追随する者がほぼ必ず現れる。これ、傍から観察していると「みんながそうしているからそうする」という一種の同調圧力のようにも見える。

それに対し、周囲が数珠つなぎのように退出し始めても、それに関わらず黙々と自分の仕事を続けている生徒がいる。こういった生徒はオリジナリティが確立されて、自分のために自分のことをする、という当事者意識が育っているのだろうと思える。時代の荒波にもまれても生き残るのは、このような人物だろう。