仕事が面白くなる時

10月30日のNHK「天皇賞」の競馬中継で、鈴木康弘元調教師が全馬解説ということで出演されていた。

私は競馬のことはさっぱり分からないのだが、

「この馬の目つきが・・・3ヶ月前の目つきと違うんですよねえ」

馬に目つきがあるのかっ!

私は驚いた。仕事が面白くなるということは、この域に達するということだろう。

受験生が入試を受けるのでも、模試を受けるのでも、それは当てずっぽうで偶然の結果が生まれるのではない。そこに至る過程があって、その課程一つひとつに必ず必然性がある。私が塾を始めた頃は、生徒が受験した模試の成績表を見ながら、その記載されている数字しか見ていなかった。しかし、今では模試の答案の一問一問を精査し、どこで正解したか、どこで不正解したかを細かく確かめる。それを授業内容にフィードバックし、扱う学習の優先順位をつけていく。

こうしたミクロな世界に足を踏み入れていくと、例えば同じく10月30日の秋期講座での生徒の作文を見て、その生徒の心理状況、そこに書かれたフレーズから生徒が抱えている各種問題や生徒の個性・特性を読み解いていけるのが非常に面白い。

だから生徒の立場であっても、このジャンルの問題をこれだけ練習したら○点が取れるんだよな、と自分の行動と得点を【自分の手中におさめて】、すべて【我が事】として認識することが出来るようになれば、その生徒にとって初めて【自分の人生が始まった】と言えるようになるのだ。

プロと言うのは与えられる仕事ではなく、自らが創り出す仕事なのだ。大人もそれぞれの道でプロになればよいし、生徒は生徒で生徒道のプロになってほしい。そうすれば、生きていくことが楽しくさえ感じられるようになる。