駒込中学・高校(文京区)

東京メトロ千駄木駅の1番出口を出てすぐ、急な団子坂をのぼると徒歩7分で駒込学園に到着する。坂の途中には森鴎外記念館があり、また近隣には根津神社、日本医科大学病院、東京大学という文化的要素に恵まれた地域。

本校は天和2年(1682)の創立。最澄が開祖した天台宗を基盤とする中高一貫校で、「一隅(いちぐう)を照らす」という伝教大師最澄の言葉を理念としている。「一隅」とは、今いる場所。そして、「照らす」とはそこで精一杯努力をするということ。

本校について記すならば、河合孝允校長の気魄、アクセル全開感、リーダーシップ。これを語らない訳にはいかない。『仏教系学校としての駒込学園がなすべきこと』、『国際社会中での人間育成として取り組むべきこと』、『現在の社会情勢における駒込学園の役割』。この三課題と真摯に向き合い、他校の真似をするのではなく、独自の分析、独自の思考のもとに、オリジナルの教育に向かって突っ走っている感じだ。

河合校長のお話を引用してみよう。現在の私学は「利潤追求型私学」と「理念追求型私学」に真っ二つに分かれており、本校はその後者であると断言出来るというお話があった。つまり、利潤追求型の私学では理事1人あたり3-4000万の理事手当が発生しているが、本校では校長・理事長ともに一切理事手当を取っていないという内容。

さて、先述した『現在の社会情勢における駒込学園の役割』を詳しく見てみることにする。
本校では経済政策として、国・東京都の就学支援だけではない本校独自の授業料減免制度を設けている。これは資金繰りが大変だという現場の先生のお話もあったが、生活保護世帯も含めて世帯収入別に段階的に補助制度を設け、多くの学校で特待生にならないと学校からの支援が受けられないというものではなく、「特待のプレッシャー」なく学校に通ってもらう為に、経済的に支援できることは出来るだけ積極的に支援するというもの。親の失業・離別による家計急変にも対応している。

次に『国際化への対応』について。
高1・2では3ヶ月または1年間の希望留学制度を設け、高2ではシンガポール・マレーシアへ4泊6日の修学旅行を行う。ハワイ語学研修は中1から参加でき(昨年37名)、高1で英語しか使えない英語漬けの国内キャンプを行う。そのために通常授業では「イマージョン授業」といって数学・保健体育・地理といった一般科目を外国人講師による英語オンリーの授業で展開している。これはもちろん必修だ。

このように、英語しか使わない、英語しか聞こえない、英語しか話せない英語漬けの環境を多く用意することで、英語を理解する・表現することを骨身にしみ込ませている。イマージョン授業の際は、日本人教員も英語を使うことが校内で義務付けられており、ブロークンでもいいからとにかく英語を使うことを徹底している。英会話は中高ともに15名以下で行う。

最後に『仏教系学校としての特色』。
まず授業開始時にはそれぞれ30秒ずつ黙想を行い、心身の静寂に努める。中学では日光山研修、高校では比叡山研修を行っている。比叡山研修は2泊3日のなかで、午前2時に起床し懐中電灯一本で山中を30km踏破する過酷な回峰行がある。「二度と行きたくないが、自分のためになった」と各生徒が振り返る厳しい研修となる。

以上を本校の骨格として、他の面も見てみよう。
中学では3年間給食を実施し(1食600円)、「いただきます」の真意を理解させる。高校の昼食は売店、食堂、弁当持参を選べる。

中学の男女比は5:4、高校の男女比は1:1となっている。コース改編を経て現在はアドバンスコース、スーパーアドバンスコースの2コース体制となり、来春はアドバンスコースの初の卒業生が出ることになる。高校では生徒数割合は内進:外進=1:3の割合。内進生は中3の上位者が高校での「内進スーパーアドバンスコース」に進み、その他は内進+外進生徒混合クラスになる。1クラスあたりの生徒数は、高校でも30名程度。

この他に長野県菅平での農業体験、新潟県六日町での学習合宿、夏期講習、特別講習、指名講習…と、学習面、情操教育の面で各分野に万全の体制を整えているのが駒込学園の大きな特徴だ。

河合校長が仰るに「大学合格は結果責任」として、中高6年または3年間を過ごした結果で大学の合格数が数値で得られるけれども、これは学校としての「結果責任」に過ぎず、そこに至るまでに存分の体制でお子さんを迎え入れましょう、という真の教育機関としての価値を発揮し続けているのが本校だといえるのではないか。

「校長が次々と改革方針を出すので、現場が大変なんです…」という各部担当の先生のお話もあったが、それでも教職員それぞれが河合校長のアクセル全開モードに負けじと、それぞれ前向きにスピード感をもって動き続けている学校。

外見を飾ることにとらわれず、中身の詰まった私学の模範校といえるのではないだろうか。