市川大野高等学園(市川市)

JR武蔵野線市川大野駅から徒歩19分。市川霊園の正面近くに位置する本校は、2012年度に開設された千葉県立の特別支援学校。旧市川北高校の校舎を転用しており、高等部単体の特別支援学校としては15年前に設置された流山高等学園に続いて県内2校目となる。交通の便の良い場所ではないが、バスの場合本八幡駅・市川大野駅が起点となる。

本校は4つの職業科、全9コースから構成されている。

◎園芸技術科(倍率1.04)
→農業コース(野菜・米・食品作り)
→園芸コース(ビニールハウスでの花卉<かき>栽培)

※旧校庭の約半分が畑化され、トウモロコシ・ナス・ジャガイモなどを栽培。ビニールハウスでは花の栽培を行っている。いずれも校内外での販売に結び付けている。

◎工業技術科(倍率1.00)
→木工コース(製品開発・製図、木工機械)
→窯業コース(陶芸)

※旧トレーニングルームを改装した木工実習室ではプランター、ガーデンテーブルなど、日曜大工では作れない本格的な木工製品を製造。こちらも販売に結び付けている。

◎生活デザイン科(倍率1.04)
→ソーイングデザインコース(布製品、デザイン)
→染織デザインコース(機織、デザイン)

※「鶴の恩返し」ではないが、男子生徒も女子生徒も織機に向かって糸を編みこんでいく。その糸は、隣の部屋で草木染などの手法により染められたものを使用している。

◎流通サービス科(倍率1.20倍)
→フードサービスコース(パン・クッキーの製造、喫茶コーナーの運営)
→メンテナンスサービスコース(清掃、植栽管理)
→流通コース(パソコン業務、印刷、製品管理)

※流通サービス科が本校の一番人気。校舎1階の旧教室を改装した喫茶コーナーでは、隣接するフードデザイン実習室で造られたパン・クッキーが販売されており、飲み物とともにその場で食べることが出来る。もちろん生徒が「いらっしゃいませ!」と接客をしている。商品の完成度はいずれも高い。

※校舎内の床の清掃はメンテナンスコースの生徒が行っており、ポリッシャーの機械を泡立てながら、ラバー床をピカピカに仕上げていく。

※印刷業務では、この日は県立国府台高校の学校説明会資料を印刷・製本作業中で、授業・実習というよりも実際の仕事を委託して請け負っている。本校教員の先生方の名刺も、ここで作っているらしい。

さて、本校は開設2年目であり、まだ3年生はいない。生徒数は1学年「1クラス8名×12学級」、つまり1学年あたり96名を収容し、3学年合わせて288名の定員。来年度全学年が揃い、教員数も用務主事などを含めて計100名。なので職員室がとにかく広い。

教育目標は「本物の働く力を育み、笑顔輝く生徒の育成」とし、特別支援学校の特徴である「全員の就労」を最大の目的としている。よって1年次から、企業と連携するデュアルシステム、企業実習のインターンシップを導入。デュアルシステムとは、「授業→店舗・会社での授業→授業→店舗・会社での長期実習」をサイクルとして行い、近隣の企業・店舗、具体的にマクドナルド、市川市保健医療センター、京成バス、マルエツ、ヤマト運輸、かつ太郎、はな膳、日立物流、梨農園と提携している。

例えば飲食業の「はな膳」ならば毎週火曜・水曜10-12時で調理補助、テーブルセッティングを実習する。この場合は生徒2名に本校教員1名。他企業でも実習先での生徒・教員比率は同様で、別の例では生徒4名に本校教員2名と、常に生徒の実習に本校教員が寄り添う。マクドナルドにおいては、オペレーションの難度が高いため、事前に教員のみが3日間現場研修を行い、その後生徒を連れての実習を行う。これは先生方も大変だ…。

学校生活に戻ろう。
授業は週5日制の1日45分×7時間。1年次では週15時間が専門学科・デュアル実習で、残り19時間が一般教科の学習。数学は3段階の習熟度別クラス編成、英語は月に1回ALTの外国人指導助手が入る。2年次では専門・デュアル19時間、一般16時間。

教室は旧市川北高校の普通教室1つに壁を1枚新設して8名収容の教室2つに分割。1階は木目調の床、その他の内壁・照明は一新され、ほぼ新築校舎のようである。

部活動は月曜・水曜・金曜が活動日で、陸上・サッカー・テニス・野球・バスケ・卓球・美術・音楽・パソコン部がある。部活加入率は83%。

生徒の通学区域だが、本校は学区無しで全県を対象にしており、
市川市37、千葉市37、松戸市27、船橋市15、習志野市15、鎌ヶ谷市7、白井市3、印西市2、市原市1、君津市1、大網白里市1、東金市1、白子町1、その他地域から生徒が通っている。大網白里、東金、白子から毎日2時間以上をかけて通っている生徒がいるというのは非常に驚きだ…。

本校は知的障害・自力通学が出来ることが入学の前提となり、療育手帳または医師の診察記録が必須。説明会・学校見学に参加し、夏休みに教育相談を必ず受けないと、出願ができない。コースごとの入試となるので入学後のコース変更は不可。療育手帳の区分としては在校生の分布を見ると、A(重度)はいない。B1(中度)は11%、B2(軽度)は83%、療育手帳を持たない診断書のみの生徒は5%となっている。

卒業後100%の企業就労を目指しているが、基本的に障がい者雇用枠(企業に助成金がおりる)となる。受け入れ企業は千葉県内だけでなく、東京・神奈川・埼玉の近県に及ぶ。また、卒業後3年間は公的な就労支援施設とも提携し経過観察を行う。

きめ細かい教員配置により、教員から生徒への一方通行の指導ではなく、デュアル実習にしても教員と生徒が一緒になって汗を流す。そうして3年間を過ごす中で「自己解決の力(課題を見つける)・ルール・知識・自信を身につける」という確かな生きる力を育むことを目指している。

また、各科・各コースは、そのコースに進んだからといってその業務の職業に就労するということではなく、農業ならば農業を通して「全ての職種に通じる、根底となる仕事のしかたを学ぶこと」が目的だということを渡邉校長は強調されていた。

生徒の挨拶・礼儀正しさは一般的な全日制高校では見られない程の活発さがあり、新設2年目とは思えないまとまり感を感じた。