うわべだけ

新入塾の生徒を体験授業で迎えると「あいさつが出来ない」「両手でモノを渡せない」「ハイが言えずにウンとうなずくだけ」といった三拍子揃っている状況に出くわすことが少なくない。もちろん、始めから完成度高く整っている生徒もいるのだが、大半はそうはいかず、神社社務所の旧教室でも入塾者一人ひとりを片っ端から訓練してきた、といった所だ。

学習塾なのに毎週毎週「あいさつ」だの「両手がどうの」だの、耳障りに感じておられる方もゼロではないだろう。しかしこの辺りのことは人間として極めて基本的なことなので、今の日本社会はそういうことをしつけられない世の中になってしまっているので、神尾塾としてはそこはブレずに指導していきたいと思っている。

と、いうのは、旧初富教室の生徒に私が指導を始めて3週間が経ったわけだが、当然ながらたった3週間ではこれらの基本的なことが彼らには「習慣化されていない」ことを痛切に感じるからだ。

神尾塾にしばらく通っている生徒はその点は深く定着している。生徒がモノを私に渡す場面で、私があえてその際生徒に別の指示を出すのだ。例えば「じゃあ、その手前のプリントを音読して」と。すると、在籍の長い生徒は、「お願いします!」と両手でプリントを渡すことをし終えてから、一区切りをつけて次の作業に改めて取り掛かろうとする。

逆に経験の浅い生徒は、両手で渡すことを意識の上では心掛けるようになってきたものの、まだ本人の深層意識にまで定着していないから、「お願いします」と両手でプリントを渡そうとしたところで、私から「じゃあ次に手元の1枚を音読して」と別の指示をされると、本来渡そうとしていたプリントを片手でホイと渡す形になってしまい、本人の目線は次のプリントに移っていたりする。そこで私から「両手!」と軽く叱責されたりしている。

ここが重要なところで、【行動が習慣化されているかどうか】は、こういうところで測ることが出来るのである。

体験授業の話に戻るが、恐らく他塾の体験授業ならば、入ってきた生徒が一切無言であいさつも返事もしなかったとしても、「こんばんは!今日体験授業を行う○○です!一緒に頑張ろうね!」「はい、じゃあ着席して筆箱出してください!」「今日はよく頑張ったね!これからお友達と一緒にみんなで頑張ろうね!」とか言って最後まで生徒や家庭に媚(こび)を売り続けるのだろう。

こうやって上っ面だけで、毅然とした中身のある指導が出来ない塾が実は多いのではないだろうか。神尾塾がパーフェクトだと言うつもりは更々ないが、色々と考えさせられる出来事の多いこの1ヶ月である。