千葉県立高校入試(H.27前期)理科

【1】小問集合
(1)血液の成分→中2
→赤血球の中に含まれる「ヘモグロビン」という語を答えさせるだけの問題。基本中の基本。

(2)岩石→中1
→岩石が時間をかけてボロボロになっていく「風化」という語を選ばせるだけの問題。基本中の基本。

(3)オームの法則→中2
→「電圧=電流×抵抗」の公式に当てはめるだけの問題。基本中の基本。

(4)エネルギー資源→中3
→水素と酸素の化学反応を利用して発電する「燃料電池」という語を選ばせるだけの問題。(1)~(3)までとは言わないが、準基本問題。


【2】天体→中3
(1)金星の密度とすがた
→「水・金・地・火・木・土・天・海」の関係図が頭の中に入っていないと分からないだろう。その意味でやや難。

(2)地球・金星・太陽の位置関係
→まずは地球と太陽の位置関係図を習得して、その上でそこに金星を絡ませていく。やや難。

(3)金星の見え方
→難問。だが4択の記号問題なので、適当に答えても正答率は25%。


【3】水溶液→中1,2
(1)ガスバーナーの操作
→基本中の基本。覚えるというよりも、学校での実験を通してガスバーナーの扱いに慣れておくこと。

(2)粒子モデル
→これも基本。

(3)蒸留
→沸点の違いを理解しておく、まあ基本。

(4)沸点の違い
→(3)の延長線上にある記述問題。(3)の沸点の違いを利用した蒸留の仕組みを知っていれば、表現はおぼつかなくても大体書けるだろう。


【4】金属球の運動→中3
(1)平均の速さ
→むしろ小学生の「道のり・速さ・時間」の関係式を使うだけ。

(2)位置エネルギー
→位置エネルギーが高さによるものだということを知っているかどうか。

(3)力学的エネルギー
→「力学的エネルギーの保存則」を利用するだけなのだが、このあたりの概念を理解していないと歯が立たないかもしれない。

(4)力学的エネルギー
→(3)と同様で、力学的エネルギーの保存則に習熟していないと、解けないかもしれない。


【5】植物の呼吸と細胞→中1,2
(1)細胞のつくり
→「葉緑体」という語を答えさせるだけの超基本問題。

(2)植物の呼吸
→植物が光合成をすると酸素を発生させるのは、むしろ小学生の知識。

(3)BTB溶液
→BTB溶液の色の変化を把握しているかどうかという基本の話。


【6】炭酸水素ナトリウムの分解→中2
(1)化学反応式
→何てことのない問題だが、理科が苦手な生徒はこの大問6自体を避けたがるのだろう。

(2)二酸化炭素の性質
→この辺はむしろ小学生の時から理科に関心を持っていて、基本的な知識が定着している生徒のほうが強い。中3になってからの付け焼刃的な勉強では、こういう問題でアタフタしてしまうような気がする。

(3)炭酸水素ナトリウムと塩酸の反応
→「pH」が出てきた。ゆとり教育世代の中学生だったら何のことだかさっぱり分からないだろう。

(4)炭酸水素ナトリウムの分解と気体の発生
→数学的・理科的な思考の得意な生徒向きの問題。


【7】分子の大きさ・人体
(1)浸透圧の問題
→高校の化学で浸透圧についてじっくり学習していれば、何てことのない問題だが、よほど発展的な勉強をしていないと意外とこの問題は取れないかもしれない。

(2)ヨウ素液の反応
→「でんぷんにヨウ素液を加えると青紫色になる」のは小学理科の定番だが、その知識に、では「でんぷんが消化した糖ならばどうか」という考察が必要。意外とあなどれない。

(3)だ液による消化
→「でんぷんが消化して糖になる」という基本のお話だが、さて…。

(4)消化酵素
→これは超基本。


【8】天気と湿度→中2
(1)露点
→飽和水蒸気量、露点といった湿度計算に必要な基本的な知識の習得が必要。

(2)水蒸気量の計算
→湿度の計算に習熟していないと出来ない。ただし時間が掛かるので、この問題に向き合ってドツボにはまって時間を無駄にした受験生は少なくないだろう。

(3)雲
→(1)の先にある、「露点」という語を答えさせる問題。また、雲の発生についての記述問題。日ごろから一問一答で用語丸暗記の勉強をしていたとしても、そこで覚えた用語がどこで使われるのかという「現象への理解」が同時になされていないと、適切な用語を答えることが出来ない。社会科と異なって、理科の苦手な生徒にとって理科の勉強が難しいのは、こういう理由がある。(サラッと書いたが、これは非常に重要な話)


【9】レンズと光の進み方
(1)用語問題
→焦点という語を答えさせる超基本問題。

(2)(3)(4)光の進み方
→神尾塾では、数英がある程度進んでいる生徒には理科に時間を割くようになるのだが、そこで扱う筆頭の項目がこの光の進み方。「レンズの基本形」という、「焦点距離の2倍の位置に物体を置いた時、レンズの反対側の焦点距離の2倍の位置に元の物体と同じ大きさの実像が出来る」という超基本概念を徹底的に習得することで、あとはそこから応用させて物体の位置を右に左に動かしたりして、実像の大きさや位置、虚像の発生を見る。この訓練が出来ていれば、この(2)(3)(4)は楽勝である。


【総括】
先ほどの「雲」のところで書いた指摘が、この理科の学習についての重要な訴えである。理科の学習としては3段階あって、極端に苦手な生徒は一問一答の暗記練習で良いだろう。それだけでも「葉緑体」「ヘモグロビン」といった用語ぐらいは答えられるはずだ。これで最低限の点数は取れる。

次の段階として、先ほどの「光の進み方」で出てきたように「レンズの基本形」なる基本概念を徹底的に習得することである。これによって、「湿度の計算」もそうであるし、電気の「オームの法則」などもかなり容易に解けるようになるのだ。基本概念の理解。これが理科という教科の根本ということになるだろう。

さらに最終段階としては、本稿で「難」と書いた問題。先述の2ステップを経た上で、その先に「金星の位置を考察する」とか、偏差値60以上の生徒が手を出すべき問題に進むことになる。

いずれにしても最初と真ん中の2ステップをクリアするだけで、「僕は(わたしは)理科が好き」と言える段階に至れるのは間違いないだろう。そこまで進める生徒を1人でも2人でも増やしたいと思うのだが…。その手前で数学・英語といった土台構築型の教科がおろそかになっている生徒は実に多く、理科啓蒙作戦はなかなか実行できないのが現実である。