興国高校(天王寺区)

■アクセス
JR大阪環状線の寺田町駅から徒歩7分。

■歴史
大正15年(1926)大阪市福島区に興国商業学校が創立。昭和24年(1949)現在地に移転。平成12年(2000)オンリーワン教育改革を開始。

■6コース
◎SuperAD/スーパーアドバンスコース→医学科・難関国公立大を目指す
◎PremiumAD/プレミアムアドバンスコース→海外進学・難関大学進学を目指す
◎AA/アスリートアドバンスコース→文武両道を究める
◎AC/アカデミアコース→アクティブに学び、1ランク上の大学を目指す
◎CT/キャリアトライコース→大手企業への就職、公務員、保育士、幼稚園・小学校・中学校教諭を目指す
◎IT/ITビジネス科→ICTを活用し、未来の社会をデジタルにクリエイトする

1年から3年まで、全60クラス。生徒数2400名。男子校としては日本一の在籍数。

■オンリーワン教育
本校の特徴は、6つのコースを縦ではなく、横に並べていることだ。つまり、スーパーアドバンスコースの生徒が「京大を目指す」と宣言している場面と、アカデミアコースの生徒が「英検4級を取りました!」と声高に喜んでいる場面に優劣がないということだ。大切なのは他人との比較ではなく、一人ひとりの自分の成長。オンリーワンの実現である。

■新南校舎の建設
現在、南校舎の解体が進み、まもなく更地になる。今後、地下1階・地上8階建の新しい南校舎の建設が始まる。天候に左右されないブルペン兼バッティング練習場、ゴルフシュミレーター、デジタル図書が閲覧できるライブラリー、eスポーツ専用フロアを設置予定。

■令和7年の進路実績
東京大学1名、京都大学4名(うち現役3名)をはじめ、国公立大学145名。私大は慶應5名、早稲田12名、東京理科5名、青山学院4名、同志社53名、立命館31名、関西大36名、近畿大137名ほか。

公務員試験の合格実績は国家公務員4名、裁判所職員1名、入国警備官2名、刑務官11名、大阪市消防6名、警視庁1名、大阪府警27名ほか。就職はトヨタ自動車、JR西日本、阪神電鉄など大手企業に多数。

■部活動
サッカー部、ラグビー部、硬式テニス部、レスリング部、ダンス部など全国出場、ボクシング部、陸上競技部は全国優勝。サッカー日本代表、世代別日本代表、プロ野球ではドラフト指名選手も輩出。文化系クラブもeスポーツ部、アニメーション部、日本史研究部などバラエティに富んでいる。

■草島葉子理事長・校長のお話
◎今年からウィンドアンサンブル(吹奏楽団)に大阪音大出身の朴(パク)守賢先生が音楽監督として就任。「演奏のテストをクリアしたら演奏会でステージの真ん中に立てる」と生徒を鼓舞すると、生徒は自主的に練習を始めるようになる。やる気の引き出し方が朴先生は上手。

◎公立と私立の生徒割合はかつて7:3だったが現在は6:4になった。大阪は東京型に近づきつつあり、これから5:5を目指すことになる。(草島先生は大阪私立中高連の会長)

◎府立高校は2025年136校、2040年には104校へ減らしていく。ある議員が試算したらすべての府立高校の改築で2兆円かかる、となった。どこからその費用が出せるのか。私立は必要を少し割り当てるだけで独自の質の高い教育を提供出来ている。

◎新南校舎の改築は万博や物価高騰の影響のため、15億円で請け負ってくれるゼネコンはどこにもいなかった。最終的に20億円かかることになった。旧校舎の解体だけでも1億円かかっている。

◎生徒には「よいもの」を見せる。よいものを見せれば、男の子は自然とそれについていく(影響を受けていく)。

◎男子は成長が遅い。だから成長に合わせた指導が必要。

◎学校で生活習慣と心の持ち方を整える。

◎時代のニーズに合わせて、常にアップデートすることが大事。興国高校と聞いて眉をひそめる古い先生はアップデートしていない。

◎何事も「リサーチ」と「分析」が大事。そのスタンスで自分も行動している。

◎確実に成長できる学校にしていく。

■校内見学
リーガロイヤルホテルのケータリングが入った説明会。「よいものを見せる」「本物を見せる」という本校のポリシーそのものである。他校に類を見ない大勢の教育関係者がアリーナを埋め尽くしている。

説明会後は小グループに分かれて7階からワンフロアずつ見学。本校の授業見学は通常の授業ではなく、「教育関係者による校内見学のための授業」である。先生も生徒も入念に準備し、徹底的に「見せる」ことに特化している。

教室横の廊下には「今何の授業をしているのか」の詳細な資料が山積みされ、見学者が手に取っても取らなくても細部に至るまで準備を怠らないとする心意気が素晴らしい。

アスレチックセンターではウエイト、ランニングマシンなどのトレーニング機器を設置。「見学の方は全員体験していってください」ということで、私もベンチプレスの体験をする羽目に。(笑)

仰向けの状態で20kgのバーを数回上げ下げする。高校生2名が両脇で「もう少しッス」とサポートしてくれる。バーを戻すと、次はストロベリー味の興国オリジナルプロテインを試飲。お腹タポタポになった。(笑)

1階の正面玄関に戻って解散。本校の説明会は番号札と引き換えに靴を預けるシステムになっており、動員された各部活の生徒や先生方が番号札を片手に、靴を探しにフロアを走り回っている。

■印象に残ったこと
◎先生方はビシッとしたスーツに名札着用で身だしなみを徹底。また、廊下で生徒とすれ違えば「チワッ(こんにちは)」と挨拶が頻繁に飛んでくる。気が引き締まる思いだ。

◎「興国高校でやることを決めてから入学することが大事。目的をもつこと」(アカデミアコースの説明にて)

◎アカデミアコースでは毎朝、教室内でボッチャ(室内で出来る球技のニュースポーツ)に取り組む。朝からいきなり教科学習では生徒にエンジンが掛からないため、ボッチャで身体を動かす。メンバー同士の信頼関係・コミュニケーションの活性化・チーム全体のパフォーマンス向上がボッチャから得られる。

◎ITビジネス科では中学時代にくすぶっていた生徒が復活(リスタート)できる。

◎オンリーワン教育研究所の所長で府立北野高校の元校長・恩知忠司先生は草島理事長・校長と大教大平野中高時代の同級生。

◎「オンリーワン教育は<全体指導>と<個別指導>の両立と向上が肝。個別指導の結果は進路先のバラエティの豊富さに現れる」(恩知先生)

◎「インプット型から更にアウトプット型の教育への転換」(恩知先生)

■まとめ
本校の印象を3つにしぼると…
【1】草島理事長・校長の視座の高さ
【2】教員の先生方の自発性(発言に「言わされている感」がない)
【3】生徒一人ひとりの「個」の成長を大切にしている

そして、草島先生から学ぶことを3つ挙げると…

<行動力>
説明会開始前、アリーナへ向かう通路で草島葉子理事長・校長をはじめ、教頭・進路指導部長・事務局長など各役職の先生方10名と順次名刺交換することになる。

そこでの草島先生の第一声「あら~先生、内本町ですかー東中学校のエリアは・・・」と私の名刺を見た瞬間に「東中学校」という単語を発する草島先生の瞬発力に舌を巻いてしまった。

「東中学校のエリアは最近〇〇なんですよね~」と東中学校のエリアの最新の特性まで的確に把握されていた。<行動力>がなければここまでリアルな情報収集は出来ないはずだ。

<視座の高さ>
説明会での草島先生のお話はプレゼンテーションの巧みさ、ユーモラスさは勿論だが、教育界全体、大阪全体の教育の動向を見据えた上で「では興国高校は次の一手をどうするか」の順序になる。明らかに他校の校長に比べて視座が高いのだ。草島先生が大阪私立中高連の会長を担われている理由も、そこにあるのだろう。

<チームビルディング>
草島先生のすごさは優秀な先生をヘッドハンティングされる点にもある。つまり、各分野で優秀な先生を本校に招へいし、それぞれの先生が「自分事」として仕事に向き合う環境を作られている。だからどの先生方の発言も「言わされている感」がなく、当事者として「これから興国の生徒をどうしていくか」という思いにあふれている。

説明会では各コースの生徒が原稿を一切見ずに自身のプレゼンテーションを行う。それは先生も同じだ。入念に準備し、徹底的に「見せる自分をつくる」という経験をさせるのも本校ならではだろう。

説明会資料の草島先生の文章では「不登校や起立性調節障害などの困難を乗り越えた生徒もたくさんおります」とある。高い視座を保ちながらも、あらゆる生徒層に目線を向けている。カリスマという陳腐な一言では語ってはいけない。ひたすら心動かされ、インスパイアされた3時間であった。

(2025年9月5日訪問)

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