アスペルガー症候群【2】 A君

今春卒塾したA君はアスペルガー症候群に加えてADHDがあり、多動が強かったため、初めて来塾した時も犬のようにグルグルと教室内を何十周も歩き回ってしまっていた。当然、他に生徒が来ない完全個別で時間割を組むことになった。こちらからの指示を理解し、一定のコミュニケーションを取れるまでに3ヶ月以上を要した生徒であった。

知能は平均よりも高かったため療育手帳は取得できず、中学校では支援学級に在籍していたものの、高校では特別支援学校への進学は認められない。こういう生徒が最も宙ぶらりんになってしまうタイプで、支援学級に行けば「知的には問題がないから普通学級で良いのでは?」と言われるし、普通級に行けば立ち歩いたり試験中に歌を唄ってしまったりするため学級崩壊の原因となってしまい、クラスの皆から「支援学級に行けばいいのに」と言われる始末である。

A君もやはり、途中式を書いていくような順序立てた学習が非常に苦手であったが、多動でガタガタ体を動かしながらもある時ひょんなタイミングで、大人でも思いつかないような真理めいた言葉を発することがよくあった。現代社会に順応するための器用さとバランス感覚を備えていないものの、常人とは比べ物にならないくらいの高度な鋭さを持っていたのだ。

アインシュタインやエジソン、織田信長が現代でいうアスペルガー症候群であったと言われているのは有名な話だ。うまくいかない部分にばかり目を向けるのではなく、その特異な才能を開花させることが出来れば、後世に名を残すほどの偉人になれる因子を持っているということである。