一芸が人生を救う

年末、中2のM・K君が学校で製作した「貯金箱」を持ってきた。

「誰でも作りそうなものを作っても意味が無いんじゃないの?誰も作らない形を作ってみたら?例えばスパイラルとか・・・」

と、いう話をしたのは秋の頃だった。

それから3ヶ月。完成品がこちら。

見事に、貯金箱ではない。完全にスパイラル(螺旋・らせん)のオブジェである。レンガ状に見えるのは寄木造りで、異なる色の木片を組み合わせて接着し、表面をやすり掛けすることで平面状に仕上げてある。なかなかやるじゃないか。

2枚目の写真の、上から見た姿。1本ずつの部材を少しずつ回転させてスパイラルを構成しているが、中心に軸や印を入れることなく、目分量で繋げていったらしい。

3枚目の写真では、M・K君がエクトプラズムのように気迫を吐き出して出来た塊の造形のように見えないだろうか。そう。出来上がった作品は、エクトプラズムそのもので、ある意味M・K君の分身といってよい。作品とはこうあるべきだ。

数年後、この作品を人間の身長くらいの高さでスケールアップして実現させて欲しい。そう伝えた。

M・K君が将来どういった道に進むかは分からない。でも、こういう作品を創る、誰にも真似できない「集中力」を彼は持っている。人間には必ず一芸があるはずだ。全てのことが出来なくても、一芸さえあれば食べていける。生きていける。

その一芸を、今後数年間でM・K君には見出して欲しいと心から願っている。