「勉強が苦手」とされている生徒を3タイプに分類してみよう。
【1】学力の上がる素質は持っているのだが、これまで環境が満たされなかったため大勢の中で埋もれていたタイプ
→過去に一度つまずきを起こしてしまい、以後苦手意識と嫌気を持ってしまって悪循環を起こしていたタイプのことで、個々に応じて適切な学習を与えていくことで改善できる場合が多い。
【2】何らかの先天的な原因を疑う場合
→これについては個々の考察が必要なので一概には言えない。
【3】「聴く力」と「読む力」が弱い生徒の場合
→重要事項を口頭で伝えてメモを取るように指示しても、一度で理解できずに何度も聞き返してやっとメモが取れる場合。これは「聴く力」の問題。また、例えば英語の文法や読解問題で問題文の意味を理解しようとせずに、何となく勘で答案を埋めようとする生徒。これは「読む力」の問題。
「聴く力」と「読む力」が弱い生徒の場合、例えばテスト勉強があっても「理解」の段階に踏み込むことなく、表面的に用語や記号を写真のように丸覚えしようとしている。「1番:イ、2番:ウ、3番:ア」と答えさせる問題ならば、下手をすると本当にそのイ・ウ・アのカタカナを覚えることだけで済ませようとしていたりする。
また、これらの生徒はアウトプットも弱いので、ひとつの事象を口頭で適切に説明出来なかったり、作文を書いても文脈とは関係のない語句を使っていたりするのである。例えば「今日は厚かったです」といったように、気温の程度を示す「暑い」と物質のかさを示す「厚い」の違いを根本的に理解していないからこういうことをしてしまう。一事が万事こういうことが続くから、日常生活でも薄っぺらく物事の表面だけしか見ることが出来ない。
こういった生徒の場合、過去学年に戻るさかのぼり学習や一つひとつを教えて理解させていく学習は砂漠に水をまくような無謀さがあるので、逆説的だがとりあえず目の前のものを「まず覚えなさい」と指示するしかない。知識がないと考える種すら持てないからである。その中でドツボにはまらない程度でひとつの知識と別の知識を結びつけてあげるようにする。ただ、結局のところは幼少期から本の読み聞かせや絵本等で「聴く力」と「読む力」を育むことが必須の教訓として示されているように思えてならない。