成立学園中学・高校(北区)

JR京浜東北線の赤羽駅南口を出てから、牛丼の吉野屋本社の前を右折し徒歩10分。昭和50年代の築であろうか、年季の入った校舎が見えてきた。成立学園は初訪問であり、昔関わった生徒で本校へ進学した生徒は居たが、私自身本校についての認識は薄いまま今日に至っていた。

大正14年の創立で今年で88周年。かつては男子校で、平成16年より共学化。新設された中学校は第1期生が現在高校1年となり、来春は第5期生を迎えることになる。比較的認知度の低い学校であるような気がしないでもないのだが、高校卒業生約350名に対して大学合格が国公立19、早慶上理29、GMARCH92と、手堅い進学実績を出している。予備校を必要としない密度の濃いカリキュラムが仕組まれており、これならば安心して生徒を預けられる、と言って良いのではないか。

コースは志望する大学に応じて4段階に分かれている。また、スポーツ推薦専用のアスリートクラスも設置。硬式野球、男女サッカー、男女バスケ、チアリーディングが対象。ちなみに男子サッカーは2013インターハイに出場。チアの他にボウリング部も今年は全国大会に出場している。

本校の骨太の方針としては、『見える学力』と『見えない学力』を育てること。
『見える学力』とは進学実績を伸ばすことであり、『見えない学力』とは地球環境・自然体験を土台とする情操教育のこと。「アース・プロジェクト」という水田学習(田植え・稲刈り・脱穀・畑作学習)、キャンプ、フィールドワーク、アースツアー(屋久島)、スキー教室といった体験プログラムに参加することで教養の土台を構築し、モチベーションや意欲の向上をもたらす。この他にも日本で唯一の「ナショナル・ジオグラフィック教育実験校」として「食」「環境」「科学」の各テーマでのプレゼンテーション指導にも力を入れている。また、付随して江戸文化歴史検定、論語講座も用意され、中3では卒業論文を製作する。

と、このように地道に中身のぎっしり詰まった教育を行っている。『見える学力』『見えない学力』のコンセプトは成立学園のオリジナルであり、その方針に則って常に思考をし続けながら指導計画を模索している姿勢には大いに感銘を受けるところ。他校の成功事例を模倣することがない。

生徒の様子も、完全に落ちついているという訳ではないが、それでも全体として明るくさわやかであるし、先生方も若い印象を受ける。中高一貫校としてはまとまりのある充分よい空気に仕上がっているのではないだろうか。やはり、学校の価値は訪問してみないと分からない。