退塾勧告

塾として本格的にフル稼動をするようになって、今年で二年目である。
新聞の折込広告を打たなくても、ホームページを現在閉じていても、入塾の問い合わせをいただけるようになった。口コミしてくださっている方々に心より感謝している。

生徒の新入もあったが、出て行く生徒がいたのも事実。この場合、退塾していただく場合と、先方から自発的に辞める2パターンに分かれる。

まず、後者の「先方から自発的に辞める」パターン。入塾したがやたらと落ち着きがなく、学力と志望校のギャップの問題もあって、私なりに指摘をしたり対策を組もうとしていた矢先、早々に「退塾します」と。私としては「は!?」としか言いようがない。神尾塾は個別指導なので、一人の生徒の動きによって時間割の組み方すら大きく変わってくる。教材の注文も然り。この生徒は何をしに来たのか、生徒というか家庭の問題だ。この家庭は何を考えているのか。私の邪魔をしに来たとしか考えようがない。

「子供が疲れて帰ってくるので」という家庭もあった。これまた「は!?」である。疲れない塾にどれだけの価値があるのか。しかしご存知の通り、クタクタに疲労しているところを椅子に縛り付けてまで授業をする塾ではない、という大前提の上での話である。そもそもそういうことを言う価値観の家庭と付き合う必要はないと私は考えている。辞めて結構。

辞めざるを得ない家庭の場合、例えば10月分まで月謝納入済みで、11月第1回の授業を済ませたところで退塾を申し出てくるケースが多い。ラーメン屋で言うところのいわゆる「食い逃げ」というものだ。私としては「そんなことだから(そんな配慮も出来ないから)上手くいかないんだよ!」という言葉をこの場をもって小声でささやいておきたい。

前者の「私から退塾を勧告する」パターン。
基本的に、家庭と私の信頼関係が失われたと感じた時は辞めていただく。例えば宿題の未完が連続した、遅刻が改善しない、など。生徒が上手くいかない時は、家庭内のオペレーションが上手くいっていない場合が多く、生徒だけ改善しようとして私が躍起(やっき)になっても、根本的なところで改善しない。だから私の取り組みが徒労だと私自身思ってしまった時にはもう授業を打ち切るしかない。

逆に、生徒が問題を抱えていても、家庭がしっかりしていれば最終的に大丈夫になると言える。とにかく、家庭あっての生徒であって、当たり前だが生徒と家庭は別々のものでは決してない。家庭という母体のなかに生徒が一体となっている姿が本来である。親御さんがしっかりした方で、私と意思疎通のきちんと取れているご家庭であれば、時に生徒がトラブルを抱えていたとしても、それは一時の過渡期として寛容に見守り、大丈夫大丈夫と大安心の気持ちで見守りたい。

私と意思疎通が取れないというのは、例えば連絡ファイルの押印忘れが頻繁であったり、月謝袋が大きく破けていても平気だったり、そういう常識以前のことを言う。当然私のモチベーションも下がるわけだから、トラブルが数回出てきたところで、ほぼ自動的に「辞めてください」となる。

他塾だったら絶対に退塾勧告なんてしないだろう。経営に関わることだから。しかし、私はそこだけはクリアでいたい。仮に自分の生活が苦しくなったとしても、金のために生徒や家庭を引き止めるような堕落した塾にはなりたくない。

生徒が学力に加え精神的な成長をとげ、またご家庭にも当然かつ適切なコミュニケーションを要望し、その結果、生徒=塾=家庭の三者の歯車が心地よく回転していくような、それが一人ひとり全ての生徒と家庭に起こり続けているような、そういう崇高な塾を目指したいのだ。その対価としてそれぞれのご家庭から捻出していただいた月謝を、有効かつ有益なものとして有難く拝受したいと思っている。

今週、退塾勧告を出した家庭があり、本当に残念で仕方がない。しかし、再三の話が通じなければ、授業を続けても何の肥やしにもならないのである。私のモチベーションが低下する中、このまま単調に形だけの授業を続けていても、本人のためにもご家庭のためにもならないのであれば、当然の措置を取るしかない。これが最終的に本人およびそのご家庭に益する結果になるように、願わずにはいられない。