独学のススメ

大学進学や就職に際して、必要に迫られて自分の専門分野を決める。というよりも、幼少期から何となく自分が好きで手掛けていたことの延長線上に自分の職業を見出した人の方が、その仕事に熱中しやすく、生涯続けられるライフワークにもなりやすい。

幼少期から何となく楽しくて手掛けていること、それは見様見真似で自分で勝手に工作していた、とか鉛筆でスケッチしていた、とかパソコンを分解していたとか、誰かに教えられるという行為が存在しない場合がある。

面白そうで手掛けてみたものの、「何か分からないなあ」と、まずそこから入る。「分からないなあ」がしばらく続くうちに、関連する資料を見たり、分からないなりに相手をいじくっている内に、しばらく経って「あれ?」と気づくことが出てくる。「あれ?」となるのは数日先とは限らず、1年後、2年後かもしれない。

「教えられたことは忘れるが、自分で気づいたことは生涯忘れない」
これは、人間の基本的なメカニズムである。

つまり、初めて対象物に出会って
「何だこれ、全く分からないわ」という思いを持つことが第一歩なのだ。

「分からない」と思った時点で、「何もしていない」人の遥か先に歩を進めていることになる。アドバンテージという。

そこを「学校で習っていない」「塾で習っていない」「親から教わっていない」という思考にシフトしてしまうと、既にその時点で行き詰まりを迎えてしまい、その人自身の成長が閉ざされてしまう。

以上の流れを、「独学」と呼ぶ。
定期テストの勉強であれ、受験勉強であれ、「独学」の要素の入らない勉強で成就するものは何一つとして無いであろう。

宮沢賢治の『稲作挿話』を再掲しておく。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~lyricssongs/TEXT/S7844.htm

これからの本統の勉強はねえ
テニスをしながら商売の先生から
義理で教はることでないんだ
きみのやうにさ
吹雪やわづかの仕事のひまで
泣きながら
からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない