稲盛和夫氏は今年81歳。1959年に27歳で京都セラミック(現在の京セラ)を創業し、1984年には第二電電を設立。この会社は現在のKDDI(携帯電話でいうとau)に繋がっている。2010年78歳で日本航空(JAL)の経営再建に着手。会長として経営破たんをした日航を見事に再生させた人物。
以下、プレジデント2013/3/18号より抜粋します。
◎「自分の好きな仕事を求めるよりも、与えられた仕事を好きになることから始めよ」
…最初は与えられた研究だったが、次第にファインセラミックスの魅力に取りつかれ、積極的に研究するようになった。
◎「不燃性の人は会社にいらない。勝手に燃えてくれる自燃性であってほしい。少なくとも私が近づくと燃える可燃性でなければならない」
…ものには他からエネルギーを受けて燃える可燃性のもの、それでも燃えない不燃性のもの、自分自身で燃える自燃性にものがある。何かをなさんとする人は、自ら燃え上がる自燃性でなければならない。
◎「有意注意」
…どんな些細なことでも意を注ぎ、意識を集中させ、物事を判断すること。身につけると、集中力が研ぎ澄まされ、迅速かつ的確に判断できるようになる。稲盛は完全主義者。ものづくりでは最後の1%がミスにつながる。
◎「バカな奴は単純なことを複雑に考える。普通の奴は複雑なことを複雑に考える。賢い奴は複雑なことを単純に考える」
…賢い人は複雑なことを単純な姿に変えて核心だけを残すことができる。
◎「仕事の成果=能力×熱意×考え方」
…京セラを創業して間もない頃思いついた成功の方程式。仕事で成功する人と失敗する人がいるのは、この三要素で決まる。
◎「天職とは出会うものではなく、自らつくり出すもの」
…仕方なく入社した畑違いのメーカーで、仕方なく研究した新素材が、後に天職となるファインセラミックスだった。
◎「魂をエンカレッジ(励ます)しないと、人間はどんどん利己的に動いていってしまう」
…この世に生きる意味は「魂を磨き、少しでもましな人間になるため」である。
◎「たとえ喧嘩で負けてボロボロになっても、自説が人間として正しいものであると信じるなら、決してそれを曲げないという闘魂が必要」
…経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要というもの。
◎「謙虚にして驕らず。さらに努力を」
…たとえ事業が成功して自身をつけても傲慢な人間にならず、経営者は決して謙虚さを失ってはいけない。どんな成功にも驕らず、人間性を高めていかなければならないという戒め。
◎「利を求むるに道あり。利を散ずるにも道あり」
…経営の指針に「人間として正しいことを判断基準としよう」と決める。そこには、「人生も経営も、同じ原理原則で行われるべき」という信念があった。
◎「継続というのは、人生を豊かにする秘訣だ」
…人生はつまるところ一瞬一瞬の積み重ねだ。いまこの一秒の集積が一日となり、一週間、一ヶ月、一年、そして人生となっていく。人が驚くような成果も、どんな天才が成し遂げたのだろうと思われる偉業も、実は普通の人がコツコツと積み上げたものがほとんどだ。つまりどんな大きな夢も遅々たる一歩一歩を積み重ねた果てに、やっと成就するものだ。
◎「順境ならよし。逆境ならなおよし」
…自分の環境、境遇を前向きにとらえ、いかなる時でも、努力を重ね、懸命に働き続けることが大切なのだ。
◎「悩む暇があったら、誰にも負けない努力で働く」
…深く考える、考えて考えて考え抜くことはするが、問題に対する対策を決めたら、後は悩まない。はたして吉と出るか凶と出るかはわからないが、わからないことを悩んでも仕方ない。悩みを感じる暇もなく仕事に打ち込みながら、「生きているだけでも幸せではないか」と感謝する心を育てることで、悩みは収まる。
◎「立派な仕事は『完璧主義』から生まれる」
…「完璧主義」は、毎日の真剣な生き方からしか生まれない。日々「完璧を目指す」ことは厳しく、難しい。しかし、本当に満足できる仕事を目指すなら、「完璧を目指す」ことしか方法はない。
◎「不可能を可能に変えるには、まず『狂』がつくほど強く思い、実現を信じて前向きに努力を重ねていくこと」
…願いをかなえたいならば、まず「すさまじく思う」こと。このことを松下幸之助の講演で学んだ。「できたらいいなあ」程度ではダメで、潜在意識にしみ込ませるほど強烈に思うことが必要だ。
◎「あえて損をしてみる」
…自社株を一株でも持つことはなかった。あえて損をし、さらにいっさいの欲を捨てたことが成功の秘訣だ。
◎「われわれは常に人間として何が正しいかを追い求めなければならない」
…世の中のどろどろとした醜い面や、悪い例を見せつけられたとしても、「そうであってはならないはずだ。人間としてはこうあるべきだ」と、人として何が正しいか常に自らに問い、それを追い求めなければならない。常に正しいものを求める心を持ち続けること、これは理想を追求し続けることと同じであり、われわれの生き方の基本となるべきものである。
◎「節度があり、礼儀を知り、怖さを知る人が真の勇気を身につけたとき、偉大なことを成し遂げる」
…節度があり、礼儀を知り、怖さを知る人が場数を踏み、真の勇気を身につけたときに、正しい判断ができるようになり、偉大なことを成し遂げることができる。
◎「一歩進めば、次の一歩が見えてくる。このようにして偉大なことが達成できる」
…一歩一歩尺取り虫のように進んでいく。それが偉大なことにチャレンジする姿勢である。これは決して派手なことではなく、まったく目立たない地味なことである。「こんなことで報われるのだろうか」と思う小さな一歩である。その積み重ねが、みなの賛辞を得られるような成功へといつのまにか導くのである。
最後にこんな言葉がある。
「まず言えることは、苦労もせずに楽に、平穏な人生を送ってきた人では、強い使命感を持ち、自己犠牲を厭わない「無私」の心は築けないことです。リーダーの立場に就くまでの間に辛酸を嘗め、苦難に耐え、しかも、それをポジティブに、明るく、いい方向にとらえることができ、研鑽を積んできた人こそが、リーダーとしてふさわしい人間性を身につけることができるのです。
もう一つは、心の中に美しい「善なるもの」をいつも持とうと努力する人間になることです。私は、人の生きる目的は何をおいても世のため人のために尽くすことにあると自分に言い聞かせるとともに、リーダーたらんとする人にも常にこのことを話しています。辛酸を嘗める苦労をしながら美しいよい心を持った立派な人間性をつくりあげることが必要なのです。」