1教科にしぼる

定期テスト対策をどこまで塾が行うか、という問題。5教科を満遍なく塾で対策していますよ、とテスト対策講座や個別のフォローを実施するのがご家庭としては安心が持てるだろうが、これは塾から家庭への、表向きのパフォーマンスに過ぎないことが多かったりする。

また、学校に提出しなければならない大量のワーク課題にどこまで塾がコミットするか。これも数年前までは塾が1ページごとに細かく精査して、不備があればその都度指摘をして改善させるという取り組みも行っていたのだが、そうでもしなければワークに着手できない生徒には結局のところ受け身の姿勢を助長させてしまうので、本人のためにならない。万が一ワーク課題を終えていようが終えていなかろうが、塾は託児所ではないのだから本人がその結果を背負うことはそれはそれで仕方なく、むしろそこまで塾がコミットすべきではないだろうという考えに私は傾きつつある。

しかしながら、私が中学生のころにこんなにワーク提出があったのだろうか、と不思議に思うくらいに今は課題の洪水のようになっていて、多数の生徒にとっては「課題提出のための課題」でしかないことは断言できる。また、おまけにテスト計画表を提出せよ、などもう形骸化の極致のような提出物も多く、学校としては「勉強させていることのアリバイ作り」といっては悪いかもしれないが、非常に健全でないと思う。

そのような中、塾としては何とかして生徒に点数を稼いでもらわなければならない。また、通塾していることへの価値を、テストの場でこそ実感してもらわなければならない。そのためにはテスト前に塾で取り組む教科をしぼる、という方策が出てくる。数学ならば数学、点の取りやすいゾーンに集中して問題演習を反復させる。「いやいや、それでは公文式ではないか」という意見もあるかもしれない。しかし、その公文式程度(といっては語弊があるが)の計算が出来ないから先に進めないんですよ、ということも生徒によっては言えるわけで、とにかく何が何でもここで点を取って欲しい、という方式で集中的に特定のターゲットにしぼるのである。

ただし、この方式も「脱ゆとり」後、学校によっては定期テストの難度が上がっている場合があり、基本問題は出題せずに応用問題・複合問題ばかりを散りばめている試験に出くわすことがある。すると生徒としては「あれだけ塾でやったのに」と落胆の方向に気持ちが向いていく。ここをどうやって采配しくか、が塾としては正念場だ。

試験で結果につなげるということは魔法の薬を飲んで劇的に出来ることではない。入塾後じっくり年月をかけて基礎を積み上げ、その上で数学ならば計算から文章題へ、基本から応用へと取り扱う裾野を広げていくことがやはりどうしても定石となる。その後に状況を見ながら、教科を広げる、ターゲットを広げる、という風な地道な段階を踏んでいくことになる。

このようにして考えたときに、今更かもしれないが低学年での基礎力の養成に何としても手を入れていかなければ、学年が進むにつれて「間に合わない」ということを(本当に今更だが)痛感するようになっている。そんなこんなで今年は中3生の新規入塾受付はこの5月をもって終了し、よほどの事情が無い限りは6月以降は中3生の入塾はお断りすることにした。

現代は「義務教育」とは名ばかりで、本人に浸透していないのに形だけが先行して学力不足に陥っている生徒が多い。先週の塾通信の鎌ケ谷市内の中学校の高校進学状況を見ても一目瞭然だ。心ある学校の先生、塾の指導者が中身のある取り組みを草の根的に続けていくしかない。