1年間、旧教室に放置したままの書籍を少しずつ現教室に運んでいる。書棚の上段に保管するので、興味ある生徒は一声掛けてから大切に閲覧してほしい。
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『浜野安宏 想いの実現』(浜野安宏・著、六曜社 2012年)
ライフスタイル・プロデューサーの浜野安宏が自身の足跡をまとめた大型本。建築、デザイン、ファッション、商業施設、イベント、アウトドアと、異なるジャンルを「つなげる」活動を続けて、現在75歳。「東急ハンズ」「川越・蔵の街」、そして渋谷スクランブル交差点にそびえ立つ、ビル正面を丸ごとLEDディスプレイ化してしまった「Q-FRONT」の生みの親でもある。
建築家やデザイナーと異なり、表に名前が出やすい人物ではない。しかし、実は私たちは多かれ少なかれ浜野の恩恵を受けて生活していることは間違いない。
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『はたらき方の革命』(浜野安宏・著、PHP研究所 2009年)
そんな浜野が料理人・美容師・エッセイストなど、独自の道を貫いて各界で生きている仕事人へインタビュー。サブタイトルは「こんな、ライフスタイルがあった!」。帯には「新しい価値観ではたらき、あそび、生きる人々」とある。それぞれ自分自身で思考し、模索しながら仕事の得方・仕方を試行錯誤して今日に生きている人がいる。
人生や仕事を誰かに与えられるのではなく、自分でクリエイトしていくこと。こういう生き方があるのか!という驚きに包まれる。
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『安藤忠雄 挑発する箱』(丸善 1986年)
2020年東京オリンピックのメインスタジアムの選考委員長として、”お騒がせ”な感じになってしまった建築家の安藤忠雄。中卒の東大教授ということで脚光を浴びた1990年代以降は建設規模も大きくなり、打ちっ放しコンクリートのお化けのような巨大構築物が各地に出現することになるが、そうなる前の1980年代の安藤作品が、私は好きだ。
京都の高瀬川沿いに立つ「TIME’S」、南青山の「コレッツィオーネ」は商業施設としての成否はともかく、安藤建築の面白さを味わえる貴重な作品だろう。(1975年、神戸の「ローズガーデン」では先述の浜野安宏と共作している)
中世の武家屋敷が建物と庭、風土との調和を楽しんだように、80年代の安藤作品もコンパクトながら空間の豊かさ、その中を歩くことの充実感、めくるめく景色が変化する楽しさを体現しており、デザインや建築が好きな人は是非安藤の70-80年代の建築に触れてほしい。そんな安藤の初期の作品写真と語録を集めた一冊。とにかく「熱い」。
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『建築家という生き方』(日経アーキテクチュア 2011年)
安藤を含めて、日本を代表する建築家のインタビューを集めた非売品。原広司がどういう考えで、あのスキャンダラスな京都駅ビルを設計したのか、丹下健三がどのような流れで東京都庁舎の構想をまとめたのか、隈研吾は15年前に何を考えていたのか。薬師寺の復元に尽力した、法隆寺大工の西岡常一のインタビューは貴重。
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『フジテレビ本社ビルの記録』(鹿島出版会 1997年)
丹下健三の晩年の遺作ともいえる、お台場のフジテレビ本社。その構想の原形は1960年の「東京計画」にあった。そこからコンペを経て実作が立ち上がるまで。球体展望室をジャッキアップで持ち上げる写真も掲載されている。スタジオの配置図、各フロアの詳細まで、興味深い。
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『生活地へ~幸せのまちづくり』(浜野安宏・著、学陽書房 2009年)
浜野が携わった各プロジェクトの詳細をつづった本。街を楽しく、生活を豊かにする。そのための構想を描くだけでなく、資金作り、デザイナー探しと現場レベルで汗をかいて実現まで落とし込む情熱と執念。
安藤の項で「コレッティオーネ」について触れた。このストリートは今でこそPRADA・カルティエとブランドショップの並ぶセレブ街になってしまったが、もともとは浜野が1975年に「FROM-1ST」という複合建築を立ち上げたことに端を発している。「一軒のビルから、街を育てる」…その後、雨後のたけのこのように生えてきた成金建物ではなく、その原点には浜野がいるのだ。
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『岡本太郎 歓喜』(二玄社 1997年)
南青山といえば、そこに居を構えていた岡本太郎。今は旧アトリエが記念館として公開されている。「芸術は、爆発だ」という岡本は人生そのものも爆発していたように思う。熱情、ほとばしる歓喜、それが岡本の平面作品・立体作品にあらわれている。
「弾力を失った精神は何か求めている。何を!」…岡本のことばと共に代表作がフルカラーで掲載されている。
「どうして芸術によって傷つけられないのであろうか?」…存命ならば今年で105歳になる。しかし、古さとか年齢を感じさせない普遍性。時代を超えた生命のエネルギーを具現した者として、岡本の名は後世まで残り続けるだろう。
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『伊藤若冲 生涯と作品』(東京美術 2006年)
岡本のダイナミズムが好きな人なら、やはり伊藤若冲は外せないだろう。近年、若冲ブームなるものが起きているらしい。商人から画家に転じ、細かな筆致で、しかし大胆な構図と色づかいで度肝を抜かれる。
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『太郎さんとカラス』(岡本敏子・著、アートン 2004年)
岡本太郎の養女となり、生涯秘書を務めた敏子さんのエッセイ。面白いのは、岡本がアトリエで野生のカラスを飼っていたということ。スタッフがカラスに近づいて怪我をしているのに、岡本はカラスに顔を近づけてもカラスは一切攻撃しない。
むしろ、カラスも岡本が「岡本太郎」であることを分かっていたのかもしれない。岡本とカラスの2ショットがふんだんに撮られている。岡本太郎がまた好きになる一冊。
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『あと1%だけ、やってみよう』(水戸岡鋭治・著、集英社 2013年)
クルーズトレイン「ななつ星」だけでなく、JR九州のあらゆる特別・普通列車のデザインを手掛ける水戸岡鋭治。
「それができない理由はどこにもない」「デザインは街をつくることができる」「感動をデザインする」「少し無理すると、ひとつ上のものができる」「次世代が幸福になる仕事でなければ意味がない」…仕事へのアプローチ、流れ、デザイン論をまとめた水戸岡の仕事術。
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『水戸岡鋭治からのプレゼント』(CAMK 2014年)
水戸岡のイラストレーションをはじめ、これまでの業績を一挙に展示したイベントの図録。もともとイラストレーターとして水戸岡の仕事が出発しているが、農村・自然・鳥・植物・魚・動物といったイラストの数々は凄腕としか形容しようがなく、デザイナーとして活躍する人物の、磐石の基礎にもとづく技術力の高さに舌をまいてしまう。
この一冊に見とれてしまえば、時を経つのも忘れてしまうだろう。
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『人体の世界』(国立科学博物館 1995年)
人体の標本がプラスティネーション化されている。「たばこはダメ」というのは簡単だが、喫煙により肺が実際に黒ずんでいる標本を見てしまえば、百聞は一見に如かずで、たばこの怖さを思い知らされることになる。そんな生々し過ぎる写真集。
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『鎌ヶ谷のあゆみ』(鎌ヶ谷市郷土資料館 2002年)
郷土資料館や、旧三橋記念館で開催された写真展の図録。「鎌ヶ谷のあゆみ」の他に「かまがやの文化財」「鎌ヶ谷・昭和の日々」「高度経済成長と鎌ヶ谷」の図録も購入してある。
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今週はひとまず以上。