落ちこぼれを激増させる新課程

小学校は2020年4月から、中学校は2021年4月から、新学習指導要領に基づいた新しい教科書が導入される(されている)。

これまでも教科書は4年目安で改訂され、近年は上の学年で学習していた単元が下の学年に移行されることが多い。例えば、従来の中学1年生が秋ごろに習っていた「座標」を現在は小学4年生が「位置の表し方」として学習している。

2020年最新の小4教材(ENの栄光ワーク)に収録されている単元を見ると、

◎大きい数
◎折れ線グラフ
◎わり算の筆算
◎角の大きさ
◎小数のしくみ
◎倍の見方
◎がい数の使い方
◎計算のきまり
◎垂直・平行と四角形
◎分数
◎変わり方調べ
◎面積
◎小数のかけ算とわり算
◎直方体と立方体(「位置の表し方」はここに含まれる)
◎共通部分に注目して

このように、かなり膨大

最後の「共通部分に注目して」は中2の「連立方程式」を中学受験の消去算で解かせる問題(中学数学でいうところの「加減法」)。参考に最新の小3教材を見てみると、「□を使った式」という名目で既に方程式が開始されている。つまり、小3で「方程式」、小4で「連立方程式」を学習することになる。

ブクブクと肥大化した新教材の内容に、果たして現実の生徒がついていけるのか?

小4の「計算のきまり」を詳しくみると、以下のように細分化されている。

【1】計算のじゅんじょ①
「100-30×12÷4=100-360÷4=100-90=10」のように途中式を順序立てて書く

【2】計算のじゅんじょ②
「1個350円のハンバーガーと、1個200円のポテトをセットにして買います。3セット買うと、代金はいくらですか」という文章を「(350+200)×3」という一本の式にまとめる

【3】計算のきまり
「102×8=(100+2)×8=100×8+2×8=800+16=816」のように工夫して計算する

成績上位の生徒であれば、それぞれの方法を区別してストンストンと頭の中に入れていくだろう。ところが生徒の実態を見れば、そんなに合理的で扱いやすい者ばかりではない。多くの生徒はカリキュラム通りに【1】【2】【3】を履修させた結果、もたらすのはただ<混乱>だけである。

「102×8」なんて、単純に筆算させた方が向いている生徒もいる。そういうタイプの生徒に【3】の方法で工夫しなさい、なんて教えてしまったら生徒の思考が混乱するだけで、普通の筆算すら解けなくなってしまう。どのような方法であれ、生徒にとっては<自力で答えを見いだす力をつけること>が重要なはずだ。

新しい教材内容の立案に関わる者は、こういった細かいニュアンスの現場感覚を理解しているのだろうか。生徒の実態に関わらず、「机上の空論」で方針を策定しているのではないか。

今は情報化時代であるので、各教科の入試問題も長文化し、膨大な資料から自分に必要な部分を読み取って解答させるタイプの問題が増えている。いわゆる「情報処理」に長けた生徒が勝ち残る問題だ。当然、小学校の新しいカリキュラムも同じ傾向で、新たな単元を高速で矢継ぎ早に学習することに耐えられる成績上位層の生徒以外にとっては、再浮上の不可能な落ちこぼれにいつ陥ってもおかしくない。

多くの生徒にとっては「理解したか」「自力で解けるか」ではなく、ただ「習いました」と上っ面のアリバイ作りで時間が過ぎてしまうような、大変由々しき状況である。

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