不登校をどこまで肯定するか

これまた12月9日読売新聞朝刊の「人生案内」より。



「現実逃避し登校しない弟」

20代の会社員女性。すぐにやる気を失い現実逃避する弟を何とかしたいです。大学の薬学部に入った弟は、3年まで楽しそうにしていましたが、4年になると「勉強についていけない」「友達がいない」と学校に行かなくなりました。励まし続けた母は疲れ果ててしまいました。そして弟は、本当にやりたかったのは服飾関係だったと両親に話し、大学を中退して今年から専門学校に通い始めました。最初は楽しそうでしたが、9月に入ると「学園祭の役割に不満がある」「友達もいなくなった」と言い出し、朝起きてこなくなりました。2度目の学生生活に送り出してもらったにもかかわらず、現実から逃げ、両親を悲しませるなんて信じられません。弟に対しては、励ましたり怒ったり慰めたりしてきましたが、どう声をかけたらいいかわかりません。
(神奈川・I子)

【回答】
弟さんを思い、ご両親を気遣うあなたのお気持ちが痛いほどに伝わるご相談です。弟さんの問題は、最初は自分の希望を通して楽しんでいるのに気に食わないことがあるとひきこもり、ご家族を振り回す自分勝手さということになりますね。教育には学費がかかることや、人生何でも思いどおりになるとはかぎらないことも知らないわけで…。これはものすごく未熟で、まあ幼稚園児のレベルと言うか…いや、こう言うと幼稚園児に失礼ですね。この対策はどうやって多少なりとも成熟させるかということに尽きるのですが、私はわりと楽観的です。これだけしっかりした姉上、愛情に満ちたご両親がおられるのですから。世の中の原理を言って聞かせる。それは時間がかかりますが、これが伝わらないわけがない。ただ、甘やかしてはいけせん。「もう我が家には、経済的に後がないのが現実」「ここで学校をやめるのなら、大学でかかったお金を全部返してもらわないとやっていけない」くらいは言ってあげないと。思い切って、「もう子どもじゃないし、家から自立してもらうかね」くらいのことを言って本気にさせる手もあるかもしれません。
(精神科医・野村総一郎)

不登校の最も難しいところが出ているなあと思い、転載してみた。私は不登校を肯定的に受け止める立場だが、同時に不登校に陥った生徒は「逃げ癖がつきやすくなっている」という側面も認識している。周囲から見て「ちょっとしたこと」で、0か100かで100が達成できずに98しか得られないだろうと本人の中で不満が2出てきただけで、その98をもスパッとあきらめて「行かない」「しない」選択肢に舵を切ってしまうということだ。

これを考えた時に不登校という選択肢は極力避けるべきだと思うし、同時に学校への復帰ということを考えることが第一だろうと思わずにはいられなかったりする。

「潔癖」的な気質が悪い方向で出てしまうのが不登校の一つの側面といえる。そういう生徒には、「こうでなければならぬ」という固定観念を軽減させて、「あいまいさ」「ファジーさ」という中間領域的な感覚を指導者はその生徒に作っていかなければならない。だからこそ不登校への対応というのは「難しい」のである。