穴埋め問題の欠点

易しいとされる教材に「穴うめ問題」が多かったりする。問題文にしたがって、□の空欄にことばや文字を当てはめるだけ、という出題だ。

私は、穴埋め問題では力がつかないと考えているので、まず採用しない。むしろ穴埋め問題は嫌いである。これは、断片的に用語や数字を答えたところで、問題そのものの生命(エナジー)が人間のなかに入ってこないので、意味がないからだ。

他の例でたとえてみよう。

コンビニに、いろいろな本の格言だけを抽出した「名言集」なるものが売られている。これ、まず感動しない。どんなに面倒でも、もともとの一冊を読みながら搾り出した、自分なりに気づいた一行の名文には到底及ばないからである。一冊の本には著者や編集者がこめた思いが含まれている。そのエネルギーを受け止めながら読むから、元の本を読んでところどころ「なるほど!」と思える事柄にこそ味を感じるのだ。

ところが、「名言集」になってしまうと、食べものの主成分のビタミンBやアミノ酸だけを舐めていれば美味しいのか、というのと同じで、自分が切り取った断片ではないから、元の本そのもののエネルギーが自分のなかに入ってこないのである。

料理だってそうだろう。店で買ったお惣菜よりも、自分で作った料理の方が、味はともかく食べていて何となく実感がこもるものだ。

このように穴埋め問題は一見、便利そうであるが、生徒にとっては全く身につかないのである。例えば中学2年数学の証明問題。よく穴埋め問題を使われやすい単元だが、こういう単元こそ、下手でもよいから「三角形ABCと三角形DEFにおいて・・・」と自分で最初から最後まで作文させることで初めて身につくのだ。