「さわやか・はつらつ・ひたむき」をスクールカラーとしている八千代松陰。自然光の降り注ぐ、白くて明るい校舎の雰囲気も、教育内容も、生徒たちの姿もまさにその言葉を体現している。電車では京成本線または東葉高速鉄道の勝田台駅からバス。国道16号線沿いにあって、隣地は千葉英和高校。スクールバスは新鎌ヶ谷・印西牧の原・印旛日本医大・JR千葉・四街道の各駅から発車している。
本校はスポーツ施設が充実しており、硬式野球場、陸上競技場(ラグビー場)、サッカー場2面、女子ソフトボール場、中学野球場、硬式テニスコート8面、軟式テニスコート7面、ジョギングロード、投てき(砲丸投げ)練習場、体操場、レスリング場、剣道場、新体操場、柔道場、卓球場、屋外プール…と、運動設備に事欠かない。というのも創立者の山口久太先生が県立船橋高校、市立習志野高校の校長を経て、日本体育協会の理事、東海大学体育学部長を務められたスポーツ指導者であったためであろう。
創立は1978年で、今年高校が39年、中学が35年目。高校は1学年700名を超える人数で千葉県有数の大規模校となっている。
【高校】
IGSコースが1学年70名、普通コースが580名。このうち中学からの内進生が240名で、高校から入学する高入生が410名。IGSコースは2クラスあって、内進生クラスが1、内進生+高入生混合クラスで1。全体で各学年16~18クラスを編成している。
HR(ホームルーム)クラスとLR(レッスンルーム)クラスは別となっており、HRクラスは成績を均質化。授業は習熟度別のLRクラスで受講することになっている。3段階から6段階にレベルを分けた授業で生徒の「(出来なくて授業についていけない)落ちこぼれ」も「(出来すぎて授業がつまらなくなる)浮きこぼれ」も同時に起こさない。
2年次では選択科目数が6時間、3年次では18時間と増大するため、一人ひとりの希望進路に応じた授業選択が可能となっており、大規模校だからこそ出来る、ダイナミックかつきめ細かいカリキュラムの設計は本校の何よりの魅力であり、「持ち味を生かす教育」その言葉通りの体制になっていると言えよう。人数の多い学校だから…大雑把なのではないか…目が届かないのではないか…という指摘は本校には一切当てはまらない。
他に、指名補習を含めた補習、また全員が「スタディサプリ」に加入するなど、漏らさず確かに勉強をさせていく磐石の態勢があり、それが今日の八千代松陰の価値に繋がっているのだろう。
【中学校】
八千代松陰高校でリーダー性を発揮できる生徒の育成、が中学校創設のコンセプト。中学校もLR(レッスンルーム)制を採用して、1学年3から6段階にレベル分けをした習熟度別授業を展開。年間5回の定期試験をもとにクラス替えが随時行われ、その時々の状況に相応しい難度のクラスで授業を受けることになる。だから1クラス内の学力差が少なく、安定した授業を行えている。
土曜日も授業があるということと、オール4以上の内申で入ってくる高入生と渡り合える学力を身につけるため、中学校でも補習を細かく行う。ここで大切なのは、「毎週月曜日と火曜日は部活動が無い」ということ。部活は週5回に限定し、この月曜・火曜を補習日に当てて基礎的な学力を養うことに時間を充てている。これは「月月火水木金金」で休みのほとんど与えられない公立中学校の部活動に比べて、何と極めて健全な取り組みではないだろうか!?
【IGSコース】
高校IGSコースの1組は内進生のみで構成されているが、授業が先取りをしている分、部活動との両立を可能にしている。これは何と比べているかと言うと、IGSコース2組が内進生と高入生の混合クラスであるので、2組の方が1組よりも週3時間授業数が多く、その増えた時間分で先を行く1組に追いつかせるということだ。だから1組の方が比較的ゆとりがあり、部活動に参加できる余裕が出てくるということなのだ。
【進路指導】
大学受験ありきではなく、生徒の「生き方」を生徒自身に考えさせる指導を目指している。なので、進路先は四年制大学だけでなく、短大・専門学校・就職と多岐にわたる。通常、八千代松陰レベルの学力であれば四年制大学を目指させる指導が一般的かと思う。
就職は今春の卒業生で6名おり、そのうちの5名は警察官、市役所等公務員試験の合格。「勉強が出来るから大学」ではなく、生徒自身が「いち早く社会の役に立ちたいから就職したい」という考えを持っていれば、それを真正面から支援するのが本校のポリシー。
専門学校は今春男子21名、女子29名で、女子の大部分は医療・看護系へ進んでいる。大学は推薦・AOなどの特別選考で進学する生徒の割合が3年前と比べて、25%→20%→17%と徐々に減っており、反面一般受験で進学する生徒が50%→55%→59%と年ごとに増加している。ますます骨太の進学力を持った学校に確実に進化しているということだろう。
今春は東京大学の現役合格も1名果たしており、こちらは東大が開始した推薦入試での合格で、全国77名のうちの1名という。学力はもちろん、人間面・人格面での向上が果たせているからこういう結果に繋がっているという分析は何より本校の自負であり、同様の結果は千葉県立保健医療大の4名合格でも同様の状況であるので、「心身ともに」成長できる学園であることが裏づけられるだろうと思う。
生徒が頑張れば教員も頑張るということで、「より正確な」進路指導を目指して教職員の校外研修、進路研究にも力を入れており、さすが一流の学校であると納得させられるばかり。
【中学入試】
中学校は今春221名の入学。12月の推薦入試は学科推薦(小学校推薦)と自己推薦の2つに分けられた。
学科推薦は2.31倍、自己推薦は2.95倍。1/20一般入試で1.62倍、1/21一般入試で3.07倍、1/25一般入試で4.31倍、2/5一般入試で4.75倍と、年々入学のためのハードルが高くなっている。確かに首都圏模試の偏差値も年々上昇している。この先手の届かない学校になってしまうのだろうか。
【高校入試】
IGSコースは入試相談が無い。つまり国語・数学・英語+面接の一発勝負ということ。内申よりも一般入試の得点次第。
普通コースは前期入試のみ単願・併願の入試相談が可能。つまり、中学校での内申点を充分確保していれば本校への道が開かれるということであり、もう少し具体的に言えば、単願でオール4、併願でオール4+2ポイント程度の内申が必要になる。これは千葉県の東葛地区で入試相談の出来る最高水準ということになるので、各中学校の中で9教科の学力の高い生徒は概ね本校を併願受験しやすいということだ。それだけに学力の高い生徒が集まりやすい。
本校と隣接する千葉英和も5教科の内申で同水準を提示しているが、千葉英和の例えば特選コースはあくまで4段階あるレベル別コースの中の最上位コースに過ぎず、校内格差が激しいということ。これに対して八千代松陰は全体の水準の高さが全校生徒に保証されているという違いがあることはきっちり区分けして見ておこう。
もう1点、八千代松陰が9科判定の学校なのは、創立者・山口久太先生の「さわやか・はつらつ・ひたむき」の言葉の通り、勉強でもスポーツでも、それぞれの分野で得意なものを持っている生徒に来て欲しいという願いが込められているのではないかと私は解釈している。であるので、仮に5教科が比較的不得手であっても、実技教科の内申の高い生徒は本校に出願し易くなるという、同じ生徒が5科判定の高校に出願したら相当ランクが下がるのに、という所でここに八千代松陰のひとつの独特さが表れている。ということも大事なチェックポイントだ。
尚、後期入試がH.29年度より再開されるが、「教科横断型総合問題90分」とされており、2020年の大学入試改革を踏まえた問題作成となる模様。その分対策は取りにくい内容になるが、日頃の勉強をきちんとしておこうとしか言いようが無い。また、本校自身も、この後期入試を実験台として今後入試問題の革新を図っていきそうな気がする。
【奨学生】
単願で入学後リーダーシップの発揮できる生徒という条件で、5科オール5+9科41以上の高校受験生は入学金の免除。そしてそこに一般入試の得点の上位者が加味されて月額納入金の免除額が段階的に決まっていく。このような生徒はむしろ県立上位校に進むのだろうが、奨学生枠を判断材料に含めることは、その家庭の経済力に関わらずに私立への選択肢を広げる重要な要素となることを忘れてはならない。
(6月30日訪問)