簡単な問題ほど、落とし穴がある

「うちの子、上手くいっていないんです」「どうにかしたいんです」というご家庭ほど、入塾当初の段階で「塾で簡単な問題ばかりさせて、もっと難しい問題を解かせてほしい」と要望をいただくことが時々ある。

・・・「分かってないな」と私は思ってしまう。問題の本質が見えていない。だから上手くいかないんだよ、と。

当塾で入塾からしばらく簡単な問題を扱うことが多いのは、確実に解けるはずの問題の奥にある「落とし穴」を探すためなのだ。

「割れ窓理論」という言葉を聞いたことがあるだろう。

1枚の割れた窓ガラスを放置しておくと、更に割られる窓ガラスが増えて、やがて建物全体、街全体に荒れる範囲が広がってしまう。これがアメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングの提唱した「割れ窓理論」である。

当塾はこの「割れ窓理論」をフルに活用している。

身近な例でいえば、小学5年生に対して小学2年生の一桁の整数計算を与える。そうすると、「8」や「0」の数字が一筆書きで繋がらないとか、「9」と「a」を混同しているとか、初歩的なトラブルが改善されないまま年齢だけ重ねてしまっているのを発見できる。

桁の多い加減乗除の筆算で繰り上がりの数字とメインの数字を混同して分からなくなるパターンもそうだ。

この細かな穴を、易しい問題を使って改善して土台を整えていく。つまり「今上手くいっていない」と感じる原因は、その数年前の大切なことを放置した点に起因しているのだ。

こういった初歩的な課題を改善した上で、初めてその先のレベルに進める。これをしないで初歩的な課題を残したまま先のレベルに進ませるのは、それこそ生徒に対して拷問を仕掛けているようなものである。私はそんな無神経なことはしない。

簡単な問題ほど、落とし穴がある。

だから先人たちは、武道であれば「守・破・離」という言葉を遺して、基礎の重要性を説いたのである。

※過去記事「割れ窓理論」

※過去記事「大学入学共通テスト<数学>の読み解き」