寝屋川高校、定員割れの意味

3月8日に大阪府から公立高校(一般入試)の最終志願者数が発表された。

寝屋川高校の定員割れがSNSなどでも衝撃的に受け止められているため、この点を解説してみよう。
(本稿では補足的に八尾高校についても記す)

まず、寝屋川高校の位置づけはこうだ。
※SSは最新の五ツ木偏差値

高津(文理学科)SS65.0
生野(文理学科)SS64.0


寝屋川 SS60.0
八尾 SS58.5


清水谷 SS57.5
夕陽丘 SS56.0

当塾のある大阪市中央区を基準にして考えると、まず文理学科の最低ラインとしては高津高校を狙うことになる。
(高津からちょっと下げると生野でギリギリ文理学科)

しかし、高津はレベルが高すぎると敬遠する層は清水谷を受けることになる。

ところが「高津は高すぎるし、清水谷は低すぎる」と、不満を持つ層も存在する。

そこで登場するのが両者の中間領域に位置する寝屋川高校である。
この寝屋川高校のSS60ラインの公立高校が意外に少ないのだ。ここに寝屋川高校の価値というものが発生する。

さて、倍率の推移を見てみよう。

▼寝屋川
2023年 志願者413名/定員320名(1.29倍)

2024年 志願者397名/定員360名(1.10倍)

2025年 志願者338名/定員360名(0.94倍)

▼八尾
2023年 志願者394名/定員280名(1.41倍)

2024年 志願者345名/定員320名(1.08倍)

2025年 志願者317名/定員320名(0.99倍)

今回、この貴重な中間領域である寝屋川高校が定員割れをしてしまった。定員割れということは、基本的に全員合格ということである。

全員合格ということは、本来寝屋川高校に入るべきでない学力層の生徒も入学することになる。ひいては学校のレベルが下がることを意味する。

つまり、貴重な中間領域そのものが崩壊してしまうのである。

結果的に今後、受験生は「高津か、清水谷か」という「高すぎるか、低すぎるか」の二択を迫られることになる。いや、それこそ中間領域に位置する層が私立専願に流れる

以下は先ほどの表に2025年の倍率を書き加えたもの。

高津(文理学科)SS65.0(1.29倍)
生野(文理学科)SS64.0(1.26倍)


寝屋川 SS60.0(0.94倍)
八尾 SS58.5(0.99倍)


清水谷 SS57.5(1.22倍)
夕陽丘 SS56.0(1.23倍)

今回、「文理学科」「都市部の比較的人気の高い高校」「国際系など特色を持った学校」をのぞく、従来タイプと実業系の高校は概ね定員割れとなっている。

言うまでもなく、私立高校の授業料無償化の影響だが、定員割れとなった公立高校の統廃合がこれから更に進むことになるだろう。

こう言っちゃナンだが、私立入試は上位校を除けば中学~高校間の概ね出来レースであり、その点公立入試は定員を厳守するため真っ当な入試が機能する。つまり受験生が勉強するということだ。

公立高校が減るということは真っ当な入試競争にさらされる生徒が減るわけで、それは国にとって将来的に決してよい成果を生み出すことはないように思うが・・・。